史上最も悪趣味な「特級呪物」映画

『ピンク・フラミンゴ』(1972)

『ピンク・フラミンゴ』
『ピンク・フラミンゴ』【Getty Images】

監督:ジョン・ウォーターズ
キャスト:ディヴァイン、デイビット・ロシャリー、メアリー・ビビアン・ピアース

【作品内容】

 メリーランド州ボルチモア郊外。「バブス・ジョンソン」という偽名で潜んでいるディヴァインは、卵しか食べない母親エディ、不良息子のクラッカー、覗き趣味のある友人コットンとともに、トレーラーハウスに暮らしていた。

 ある日、タブロイド紙がディヴァインを「世界で最も下品な人間」(The filthiest person in the world)と評価。我らこそが「世界で最も下品な人間」と主張するマーブル一家との熾烈な争いが始まる。

【注目ポイント】

「カルト映画」といわれるジャンルがある。低予算ながら公開後にニッチなファンを獲得し、長期にわたって鑑賞されるようになった作品群だ。しかし、中には、「一体だれがこれを観るのか…?」と訝しんでしまう作品があることも確かだ。『ピンク・フラミンゴ』もそんな作品のひとつだろう。

 メガホンを取るのは自主映画出身の映画監督ジョン・ウォーターズ。主演を巨漢のドラァグクイーン・ディヴァインが務める。

 伝説のドラァグクイーン・ディヴァインの存在を世に知らしめたと言われる本作。しかし内容は、「世界で最も下品な人間を決める」という名目のもと、出演者たちが奇行を繰り広げるというもので、吐き出した吐瀉物を口に戻したり、鶏姦の末に鶏を殺したり、プードルのひねりたてのフンを食べてみたりと、全編通して見るに堪えないシロモノに仕上がっている。

 しかも、出てくる吐瀉物や性器、豚の死骸、フンに至るまで、全てが「ホンモノ」。観ているこちらが吐き気を催すこと必至だろう。
 
 なお、監督のジョン・ウォーターズは、1981年から商業映画に進出。特に、ビッグサイズの女子がスターへの道を夢見る『ヘアスプレー』(1988)は、その後ブロードウェイでミュージカルとして上演され、2007年に再度映画化されている。

 厳格なカトリック教徒の家庭に育ちながら、同性愛者であることを公言しているジョン。『ピンク・フラミンゴ』と『ヘアスプレー』は、彼が志向する多様性のコインの表裏なのかもしれない。

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