「漫画原作」が気を吐いた冬ドラマ…最も面白かった作品は? 原作を換骨奪胎した各ドラマの魅力を徹底解説
佳境を迎えている2025年の冬ドラマ。中でも『まどか26歳、研修医やってます!』『東京サラダボウル』『秘密〜THE TOP SECRET〜』『クジャクのダンス、誰が見た?』は、漫画原作という共通点がある。そこで今回は、『まどか』以外の3作品に話題を絞り、それぞれがいかに原作を換骨奪胎して独自のドラマに仕立て上げているのか、面白さの真髄を解説する。(文・ばやし)
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【著者プロフィール:ばやし】
ライター。1996年大阪府生まれ。関西学院大学社会学部を卒業後、食品メーカーに就職したことをきっかけに東京に上京。現在はライターとして、インタビュー記事やイベントレポートを執筆するなか、小説や音楽、映画などのエンタメコンテンツについて、主にカルチャーメディアを中心にコラム記事を寄稿。また、自身のnoteでは、好きなエンタメの感想やセルフライブレポートを公開している。
制作陣の優秀さが光った『東京サラダボウル』
2025年冬ドラマのトピックとして見逃せないのが、漫画原作ドラマの好調だ。昨今、漫画作品のドラマ化といえば、キャラクターの再現度やドラマ尺でのストーリーの描き方など、ファンが期待する映像化との乖離が起きてしまうこともしばしばあった。
しかし、本クールで放映されているドラマは、原作の存在を知らずに視聴した新たな視聴者層を開拓しながら、元々の原作ファンからの支持も十二分に得ている印象を受ける。
漫画原作ドラマの好調を象徴していたのが、他作品よりも一足早く完結を迎えたNHKドラマ『東京サラダボウル』だ。本ドラマを視聴して、原作漫画を手にとった人も多いのではないだろうか。
講談社『Palcy』にて、原作者・黒丸が2021年から連載されている漫画『東京サラダボウルー国際捜査事件簿―』を映像化した本作は、漫画キャラクターに合わせたキャスティングとNHKの徹底した取材力が存分に活かされていた。
緑色の髪がトレードマークの国際捜査係の警察官・鴻田(奈緒)と、中国語の逐語通訳を仕事にする有木野(松田龍平)こと“アリキーノ”が東京で起こる外国人の関係するトラブルを解決していく。しかし、決して事件を“外国人犯罪”と一括りにすることなく、一人ひとりが異国の地で抱える悩みや苦しみに対して、真摯に向き合う姿が印象的な作品だ。
そんな登場人物たちが懸命に奔走する舞台となるのが、外国人の居住者も多い日本の首都・東京。ロケ地となった新大久保の風景、新宿歌舞伎町に軒を連ねる異国料理店を映像に収めながら、原作漫画に漂う独特な世界観をストーリーに投影することができたのは、NHKドラマ班の取材力があってこそだろう。
W主演を務めた奈緒と松田龍平は見た目だけでなく、言葉を発するテンションや細やかな表情の変化まで、鴻田と有木野を体現している。さらに、有木野の同僚となる通訳人たちをイモトアヤコ、関口メンディ、武田玲奈が演じるなど、遊び心のあるキャスティングも新鮮味があった。
鴻田とアリキーノの凸凹バディが結束を深めていく様子は微笑ましくもありつつ、バインミーやバナナリーフの包み揚げなど、世界各国の食文化にも触れることができるドラマになっている。ぜひ、お腹を空かせて、1話から追いかけてみてほしい。