“OZU”の申し子たち〜ジム・ジャームッシュ&アキ・カウリスマキ
さて、本章では、ヴィム・ヴェンダース以外に小津作品の影響を受けた作家を2人紹介したい。
1人目はニューヨーク・インディーズ界の巨匠であるジム・ジャームッシュ。1984年に初の商業映画である『ストレンジャー・ザン・パラダイス』がカンヌ国際映画祭のカメラドールを受賞して以降、『ナイト・オン・ザ・プラネット』や『パターソン』など、オフビートなコメディ作品を数多く世に送り出してきた。
ヨーロッパに憧れていた彼は、パリへの交換留学時に小津安二郎作品と邂逅。彼の作品に見られるドラマ性を徹底的に排除したストーリー展開や極端な間合い、シンプルなストーリー展開からは、明らかに小津の影響が感じられる。
そして2人目は、アキ・カウリスマキ。『過去のない男』ではカンヌ国際映画祭グランプリを、『希望のかなた』ではベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞している、フィンランドを代表する名匠である。社会の底辺に属する労働者や失業者を描いたオフビートなコメディを一貫しているカウリスマキは、兄に無理矢理連れられて小津作品を見た経験が映画監督になるきっかけだったと語っており、極限まで削られたセリフや無表情な登場人物、シュールで無骨なユーモアからは確かに小津の影響を感じさせる。
小津は生前次のような名言を残している。
「映画には、文法がないのだと思う。これでなければならないという型はない。優れた映画が出てくれば、それが独得の文法を作ることになるのだから、映画は思いのままに撮ればいいのだ。」
人間の普遍的な営為を見つめ、思いのままに作品を制作した小津安二郎。彼が確立した「映画の文法」は、これからも多くの映画作家の想像力の源泉になり続けることだろう。
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