日常の中に不思議な要素を持ち込んだSFコメディ作品
『サマータイムマシン・ブルース』(2005)
監督:本広克行
キャスト:瑛太、上野樹里、与座嘉秋、川岡大次郎、ムロツヨシ、永野宗典、本多力、真木よう子、佐々木蔵之介
【作品内容】
四国の地方の大学の部室に集まる男女、そこに突然現れたタイムマシーン。彼らは昨日に戻り、壊れたエアコンのリモコンを取ってこようと言うアイデアで盛り上がる。こうして、今日と昨日を行ったり来たりするだけの恐ろしく小規模なタイムスリップの旅が始まる。
【注目ポイント】
『踊る大捜査線』シリーズ(1998~)を文字通り記録的な大ヒットに導いた本広克行監督は、『踊る大捜査線』も含めて自作に演劇畑の俳優を多数起用するのはよく知られた話だ。本作や『スペーストラベラーズ』(2000)、『曲がれ! スプーン』(2009)、『幕が上がる』(2015)など、舞台作品の映画化を手掛けるなど筋金入りの演劇ファンなのだ。
本作は劇団ヨーロッパ企画の上田誠の戯曲を基に永山瑛太、上野樹里主演で撮り上げた青春タイムスリップコメディである。本作でも本広は、ヨーロッパ企画の面々や、当時は無名の舞台人だったムロツヨシなどを起用している。
日常の生活の中に少し不思議な要素を持ち込んだものは『ドラえもん』(1973~)などの藤子不二雄作品などの影響もあってか日本人にすんなり受け入れられやすい傾向にある。田舎の大学生の夏休みとタイムスリップという本作の組み合わせは、なんとも絶妙である。
日常描写とタイムスリップを掛け合わせるアイデアは、『時をかける少女』(1983)や『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(2022)『ファーストキス 1ST KISS』(2025)などにも見出すことができるだろう。
その点本作は、和製SF映画の王道と言ってもいい作品である。