実話はもっと悲惨…? 実在の行方不明事件を描いた映画5選。事実は小説よりも奇なり…謎が謎を呼ぶ展開が魅力の作品をセレクト

text by 阿部早苗

「事実は小説よりも奇なり」という言葉があるが、この世には信じ難い事件が数多く存在する。そしてそういった事件は度々映画やドラマの題材になってきた。今回は実際に起きた行方不明事件をテーマにした作品を5本セレクト。事件の内容と合わせて紹介する。(文・阿部早苗)

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【著者プロフィール:阿部早苗】

仙台在住のライター。2020年にライターデビュー。これまで東日本大震災での企業活動をまとめた冊子「こころノート」第2弾、プレママ向けフリーペーパーを執筆した他、エンタメニュース、福祉関連記事、GYAO トレンドニュース、地元グルメライターなどWEB媒体を中心に執筆。映画なしでは生きられないほど映画をこよなく愛する。

失踪から帰ってきた息子は別人だった…。

『チェンジリング』(2008)

アンジェリーナ・ジョリー
アンジェリーナ・ジョリー【Getty Images】

監督:クリント・イーストウッド
キャスト:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ

【作品情報】

 1928年、シングルマザーのクリスティンは休日に急遽仕事が入り、息子ウォルターを自宅に残して出勤。帰宅すると息子は失踪していた。それから5カ月後、警察から息子が発見されたと連絡がくる。しかし、対面した子供は全くの別人だった。

【注目ポイント】

 ハリウッドが誇る巨匠、クリント・イーストウッド。これまで『ハドソン川の奇跡』(2016)、『15時17分、パリ行き』(2018)『リチャード・ジュエル』(2020)など実話を基にした作品を多く手がけている。2008年に公開された本作もそのうちの一作だ。

 舞台は1928年のロサンゼルス。母親クリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)の留守中に9歳の息子ウォルターが行方不明になってしまう。それから5ヶ月後、警察はウォルターと思われる少年を見つけ出し、クリスティンに引き渡すも、全くの別人だった。少年が自分の息子ではないと断言しても警察は信じようとしない。その上、警察に逆らったという理不尽な理由で精神科病棟に収容されてしまう。しかし、そこには同じ理由で何人もの女性が送り込まれていた。

 本作が下敷きにしているのは「ゴードン・ノースコット事件」である。少年を誘拐し監禁、性的虐待をした上で殺害するといった恐ろしい行為を20人もの少年に繰り返していたゴードン・ノースコット。しかも、彼の母親も被害者処理に加担していたという。

 信じがたい事件だが、映画で描かれている内容は、ほとんどが実話である。となれば、疑問なのは警察が何故、クリスティンに偽の子供を連れて来たのかだ。これは、汚職まみれだったロス警察が失踪事件につけこんで自分たちのイメージアップを図るためで、誘拐事件とは全く関係がなかった。

 映画はゴードンの死刑執行とクリスティンの7年後を映し出して幕を閉じる。息子の無事を祈る母の思いと権力に屈しない強さ、絶望と怒りが入り混じりながらも毅然と前を向く母親の姿が胸を打つエンディングとなっている。

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