消えた5人の子供たちは、11年後に白骨化していた…。
『カエル少年失踪殺人事件』(2011)
監督:イ・ギュマン
キャスト:パク・ヨンウ、リュ・スンリョン、ソン・ドンイル、ソン・ジル、キム・ヨジン
【作品情報】
1991年、韓国・大邱で少年5人が行方不明になる。TV局のカン、教授のファン、刑事のパクが事件を追う中、あるきっかけで被害者の父親に疑惑が向けられる。
【注目ポイント】
韓国三大未解決事件の一つである少年失踪事件をモチーフにした映画『カエル少年失踪殺人事件』。「カエルを捕まえに行く」と言い残し失踪した5人の小学生の事件を、特ダネを狙うテレビ局のカン・ジスン、犯人像を分析するファン・ウヒョク教授、必死に子供たちを捜す刑事パク・ギョンシク。3者がそれぞれの思惑で事件を追う姿と、被害者家族の姿が描かれている。
多くの謎が残る実在事件だが、映画でも不可解な点が強調され事件の闇を深めている。5人もの子どもが同時に姿を消すのは極めて珍しく、複数の証言があるものの決定的な目撃情報がない上に大規模な捜索やメディアの報道が続いたにもかかわらず、遺体発見まで11年もの歳月がかかった。
映画では不可解な点を軸に、メディア、警察、家族それぞれの視点から事件を追っていくが真相にはなかなか辿り着けない。なかでも、我が子が行方不明となった親の辛さを映し出すシーンは、いたたまれない気持ちにさせられる。
さらに捜査が行き詰まる中、何の根拠もないのにウヒョク教授とジスン(マスコミ)は身勝手な推測を行い、犯人捜しをはじめる。そして被害者の父親に疑いの目が向けられると勝手に家宅捜査まで行う始末だ。
ちなみに実際の事件ではカエルではなく、サンショウウオの卵を採りに少年たちは臥竜山へ向かい行方不明になっている。11年後の2002年に山中で白骨化した5人の遺体が発見されている。警察は当初遭難と判断したが、司法解剖で他殺の可能性が浮上。しかし、凶器は特定できず、証拠も欠き、2006年に時効を迎え事件は迷宮入りとなった。
当時、広域捜査をしていればと思うと悔やまれてならない。遺骨を前にした親の言葉が11年という歳月を経てもなお、癒えることのない深い悲しみを感じさせ、胸が締め付けられる。