各界の巨匠が認める演技の天才
森田剛
元V6のメンバーとして華やかなキャリアを歩んできた森田剛。メンバーの中でも、森田の演技力は随一と言っても過言ではない。役者・森田剛ここにあり! と世間にその実力を広く知らしめた作品は、やはり2016年に公開された映画『ヒメアノ~ル』だろう。
ビル清掃会社で働く岡田進(濱田岳)の日常が、彼の恋人・ユカ(佐津川愛美)をストーキングする森田正一(森田剛)によって崩壊していく過程を描いた本作で、森田は猟奇的な殺人鬼を演じた。
平凡な青年でありながら、心の中に潜む狂気を体現した森田の演技は衝撃的だった。ちなみに、2024年に公開された映画『ミッシング』で主演を務めた石原さとみが、本作の森田の鬼気迫る演技に深い衝撃を受け、吉田恵輔監督作品への出演を熱望した、というエピソードはつとに有名だ。
時制は前後するが、生田斗真主演、太宰治原作の映画『人間失格』(2010)で中原中也を演じた森田も素晴らしかった。安定した人生など毛頭望んでいないことがよくわかる、刹那的なキャラクターを演じると、彼の魅力はより引き立つ。謎めいたピアニスト役を演じ、主演の池松壮亮と丁々発止のやりとりで魅せた『白鍵と黒鍵の間に』(2023)も、そんな森田の危険な色気が香り立つ作品の一つだった。
アイドル時代から、舞台、映画と演技の仕事を精力的にこなしてきた森田は、前述の『人間失格』のメガホンをとった日本映画界のレジェンド・荒戸源次郎から「レベルが違う」と評されたり、演劇界きっての鬼才・蜷川幸雄の寵愛を受けるなど、かねてより演技の才能を高く評価されてきた。
年を重ね、より凄みを増す森田の活動から今後も目が離せない。