役に生きる姿勢を貫く俳優
草彅剛
国民的アイドル元SMAPのメンバーとして人気を誇った草彅剛。彼も俳優として独自の地位を築いてきた。
自身が主演を務めた映画『ミッドナイトスワン』(2020)では、ニューハーフショークラブで働くトランスジェンダーの凪沙を演じ、第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を獲得するなど、草彅の俳優人生のターニングポイントとなった作品だ。本作では、表面的な演技にとどまらず、仕草や言葉遣い、眼差しのひとつひとつを徹底的に作り上げ、社会の中で生きづらさを抱える人物の「孤独」を見事に可視化してみせた。
彼が主演した作品は、どれも演じ手が草彅じゃなければ質が変わってしまうものばかり。ドラマ『任侠ヘルパー』(フジテレビ系、2009)もその一つだろう。この作品で草彅は、極道が介護ヘルパーとして働くという奇抜な設定に稀有な説得力を与えており、ドラマを成功に導いた。
草彅の演技の根幹には、どの作品においても「役に生きる」姿勢がある。人間の内面を深く見つめ、細部に至るまでこだわりを求め続ける姿勢に根ざした演技は、観る者に深い共感をもたらす。アイドルとしても俳優としても超一流。草彅剛という存在を一言で表すならこの一言に尽きるだろう。