まだまだ発展途上の途上の名作製造機
神木隆之介
子役時代から現在に至るまで幅広い層から高く評価されている神木隆之介。幼少期から培った確かな演技力の真髄は、役柄によって仕草を細やかに変える表現力の高さにある。そんな神木の出演ドラマは、何かと話題を集め、クオリティの高い作品が多い。
2006年の単発ドラマを経て連続ドラマ初主演となった『探偵学園Q』(2007、日本テレビ系)では、当時14歳の神木が仲間と共に数々の難事件に挑む天才的な推理力を持つ少年を熱演した。ストーリーの面白さはもちろん、登場人物の魅力が評価された作品であり、親しみやすいキャラクターを見事に造形してみせた神木の演技力に改めて注目が集まった作品であった。
そして、植物学者・牧野富太郎の生涯をモデルとしたNHK連続テレビ小説『らんまん』(2023)では、主人公・槙野万太郎役を演じた神木。第61回ギャラクシー賞で「個人賞」を獲得した他、ドラマ自体も高く評価され、第32回橋田賞を受賞。俳優としてより高い次元にステップアップするきっかけとなった作品だと言えるだろう。
そんな神木の押しも押されぬ近年の代表作が、『海に眠るダイヤモンド』(2024、TBS系)である。2018年の東京と、1955年の長崎・端島の2つの時代を描いた本作において、神木は現代パートでは生き方に悩むホスト、端島パートでは炭鉱の外勤として働く男を演じきった。
どこか気だるげな売れないホスト玲央と皆に愛される真面目で実直な外勤・鉄平。演者は同じなのにこうも見え方が変わるものかと衝撃を受けた視聴者は多いだろう。本作で神木は第122回ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞の主演男優賞を獲得している。
子役からキャリアを積み重ね、すでにベテランと言ってもいい神木。彼の役者としての軌跡は、作品ごとに新しい一面を見せ、従来のイメージを更新しようとする意思に貫かれている。神木の演技の尽きぬ魅力は、まだまだ発展途上だと思わせるところにあるのかもしれない。