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世間を騒がせた「ロス疑惑」の中心人物が登場
マスメディアに踊らされる大衆を皮肉ったカルト作

『コミック雑誌なんかいらない!』(1986)


出典:Amazon

製作国:日本
監督:滝田洋二郎
脚本:内田裕也、高木功
キャスト:内田裕也、三浦和義、小松方正、渡辺えり、麻生祐未、原田芳雄、北野武、郷ひろみ、桃井かおり、梨元勝

【作品内容】

主演の内田裕也が人気芸能レポーター「キナメリ」を演じ、その奮闘ぶりを通して、ワイドショーに踊らされる大衆を皮肉った一作。ピンク映画で実績を積み重ねていた滝田洋二郎が、主演と脚本を務めた内田裕也から指名を受け、初めて一般映画の監督を務めた作品でもある。

アメリカでも公開され、話題を呼んだ。以降の滝田監督は『僕らはみんな生きている』(1993年)、『陰陽師』(2001年)で日本アカデミー賞優秀監督賞を獲得したほか、『おくりびと』(2008年)ではモントリオール世界映画祭グランプリなど、数々の賞を獲得し、一流監督として認知されるに至っている。

【注目ポイント】

脚本主演を務めた内田裕也Getty Images

作品の中には当時(1985年頃)、国内を賑わせた実在の事件がこれでもかと散りばめられている。豊田商事事件とそれに伴う会長刺殺事件、日航ジャンボ機墜落事故、山口組と一和会の抗争(山一抗争)、松田聖子と神田正輝の結婚(松田聖子と交際の噂があった郷ひろみが出演)、桃井かおりと高平哲郎との交際(桃井かおりが出演)などが、スキャンダルの当事者を実際に登場させる大胆な仕掛けによって素描される。

芸能リポーター「キメナリ」に扮した内田は「恐縮です」を口癖としており、これは芸能レポーター・梨元勝をモデルにしている(梨元勝も本作に登場)。数々の事件が取り上げられる中、報道が過熱していたロス疑惑の中心人物・三浦和義の登場は一際目を引く。突撃取材に訪れた「キナメリ」に三浦がコーラをぶっかけるシーンはリアルそのものだ。

とにかくこの「キナメリ」なる男は、現場主義に徹し、行く所に必ずといっていいほどアクシデントが起きる。ヤクザの抗争も芸能ゴシップも詐欺事件もそれによる自殺や会長刺殺事件も、なんでもござれだ。その姿は、令和の今では“マスゴミ”とも揶揄されるワイドショーの域を超え、痛快ですらある。「事実は小説より奇なり」を地で行く主人公にエールを送りたくなるストーリー展開だ。

今ではワイドショーも、薬にも毒にもならないニュースを報じているばかりだが、こうした下世話極まりない時代があったことを、懐かしくも感じる。いわゆる「モキュメンタリー」(疑似ドキュメンタリー)といわれるジャンルの草分けともいえる作品だ。

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