妄想の世界に浸り、現実逃避する主人公
『勝手にふるえてろ』(2017)
監督:大九明子
キャスト:松岡茉優、北村匠海、渡辺大知、石橋杏奈、趣里、前野朋哉、古舘寛治、片桐はいり
【作品内容】
OLのヨシカは10年間「イチ」に片思いをしていたが、彼女の前に「二」が現れる。告白されたことに舞い上がるも、彼の暑苦しさに乗り切れずにいた。ある日、イチに再会したいと思い、同級生の名前を使って同窓会を計画する。
【注目ポイント】
原作は、「ひらいて」や「私をくいとめて」など、個性的な女性を描くのが得意な綿矢りさの同名小説。監督は、『私をくいとめて』(2021)、『ウェディング・ハイ』(2022)の大九明子が務め、『蜜蜂と遠雷』(2019)、『愛にイナズマ』(2023)の松岡茉優が主演を務めた。天然王子のイチをDISH//の北村匠海、暑苦しいニを黒猫チェルシーの渡辺大知が演じる。
コミカルに進んでいく作品だが、ちょっぴり怖く、切なさもある。主人公の抱える問題は複雑であるが、自己嫌悪や自己陶酔などに共感できる人も多いはず。妄想の世界に浸ることで現実逃避をはかることは、恋愛に限らず、誰にでも経験があるだろう。
ストーリーの構成も素晴らしく、主人公たちが交わす言葉の応酬には聞き惚れるものがある。おそらく前半では違和感を覚えるシーンもあると思うが、それはフリになっており、話が進むにつれて違和感が見事に回収されていくサマは痛快だ。そして、観終わった後、タイトルの意味を考えると興味深い。
本作の重要なポイントは、自分が作る世界と現実のギャップにある。自分が拒絶されていると思ったものは、自分が拒絶していたものかもしれない。「与えよ、さらば与えられん」その真理を描いているように思う。
(文・小室新一)
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【了】