確実に成長を遂げる伊藤健太郎の歩み
『光る君へ』で、オリジナルキャラクターである双寿丸を演じた伊藤は、第37回で初登場。ドラマ終盤を盛り立てた。第42回で主人公・紫式部(吉高由里子)の娘・藤原賢子(南沙良)に連れられてきた双寿丸が、傷を水で洗う印象的な場面がある。「あんたの飯が美味いから」など短いフレーズの台詞が歯切れよく、無駄のないスタイルを輪郭付けた。
傷を負うという類似なら、2022年の復帰後初となる主演映画『冬薔薇』では、伊藤演じる主人公・渡口敦が、錆びた釘が足に刺さって入院する。ベッド上で紙おむつに用を足すのが嫌で、トイレまで兄貴分におぶってもらい、帰りは足を引きずっていく往復場面が、俳優復帰までの逡巡を噛み締める歩調をストレートに伝えていた。そうやって俳優イコール生きることみたいなシンプルなビジョンを再確認できた主演映画を経てこそ、『光る君へ』や『冬薔薇』のような慎ましい名演を更新していける。
振り返れば、そこには常にきらめく演技の数々がある。それらが過不足ない集大成として結実した『未恋』の先、新ドラマ『彼女がそれも愛と呼ぶなら』(日本テレビ系、4月3日から毎週木曜日よる11時59分から放送)に出演する伊藤健太郎は、どんな歩調で1歩、また1歩を確かなものにしていくのだろうか?
(文・加賀谷健)
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