“言葉”の持つ力を感じる感動作
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(2020)
監督:藤田春香
原作:暁佳奈
出演:茅原実里、 戸松遥、各務立基、京田尚子、引坂理絵、田所あずさ、野沢由香里、土井真理、柚木尚子、木村昴、諸星すみれ、水橋かおり、
【作品内容】
幼い頃に兵士として育てられたヴァイオレット・エヴァーガーデンは、戦い方以外を知らなかった。彼女は、忠誠を誓った上官だったギルベルト・ブーゲンビリアが女に残した「心から、愛してる。」という言葉を理解できずにいたが、代筆業に務めるようになり段々と理解を深めていく。そんなある日、彼女に依頼の電話がかかってくるのだが…。
【注目ポイント】
テレビシリーズで人気を博した『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を原作にオリジナルの要素を加えて映画化した本作。原作は、京都アニメーション大賞にて、大賞を受賞した小説である。ドラマシリーズと同様に石立太一が監督を務め、脚本は吉田玲子が手掛ける。
戦後間もない時期を舞台にした作品の世界では、読み書きをできない人が多く、主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンらが従事する手紙の代筆業は、とても重宝されている。彼女は兵士として育てられたので、最初は言葉の意味を理解できなかったが、この仕事を続けるうちに言葉の持つ偉大さを知るようになる。
シリーズを通して、彼女の真っ直ぐな姿と一途な気持ちがとても健気で切なくさせられる。そして、彼女と共に視聴者も「言葉」のもつ意味とその力を学ぶことができる。
序盤から感動させられっぱなしのストーリーだが、後半は特に「言葉」を使った演出が素晴らしく、涙腺が快く刺激される。音楽や映像美も楽しめる作品だが、画面を見つめたくてもあふれ出す涙が邪魔をする。
鑑賞するにあたってテレビシリーズを観ておくのがベターだが、テレビシリーズの総集編や外伝もあるので、そちらもチェックしてみてほしい。
(文・小室新一)
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