全体主義を皮肉ったSFアクション

映画『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)

映画『スターシップ・トゥルーパーズ』
映画『スターシップ・トゥルーパーズ』【Getty Images】

監督:ポール・バーホーベン
原作:ロバート・A・ハインライン
脚本:エドワード・ニューマイヤー
キャスト:キャスパー・バン・ディーン、ディナ・メイヤー、デニース・リチャーズ、ジェイク・ビューシイ、ニール・パトリック・ハリス、パトリック・マルドゥーン、マイケル・アイアンサイド

【作品内容】

 オランダ出身で『ロボコップ』(1987)以降『トータル・リコール』(1990)、『氷の微笑』(1992)等でハリウッドでも確固たる地位を築き上げたポール・バーホーベン監督の代表作の1本。

 未来の地球を舞台に、人類と昆虫型エイリアン〈バグズ〉との壮絶な戦争を描く一方で、全体主義的な社会や軍国主義への鋭い風刺が込められた異色の作品。

【注目ポイント】

 一応ロバート・A・ハインラインの同題小説(邦題「宇宙の戦士」)の映画化となっているが、「機動戦士ガンダム」のモビルスーツの元ネタとも言われるパワードスーツの存在が丸々カットされ、その一方で敵対生命体バグズの描写と、対バグズ戦の苛烈さを描くことに重点が置かれている。

 バグズに対して人類はあまりにも非力であり、人海戦術で挑むもの次々とバグズの餌食になっていく。これは第二次世界大戦の戦場となった街で過ごしたバーホーベン監督の実体験が色濃く反映されている。

 第二次世界大戦の分水嶺となった“ノルマンディー上陸作戦”(『プライベート・ライアン』(1998)のオープニングで知られる)をイメージしたバグズとの戦いではバグズの鋭利な触手が人体を貫く。腕や脚がちぎられるという本物の戦争をイメージさせる描写が続く。

 地球の各国は1つの政府に統一され、軍分を中心とした社会が築かれている。軍歴に就いた者のみに市民権が与えられ、主人公も闘いに身を投じていく。こういった設定やナチスドイツ等の全体主義のプロバガンダのブラックなパロディなどSFアクション映画という見た目からは伺い知れない強烈な皮肉が込められている。

 あまり知られていないが映画はシリーズ化されており、2作目以降はメッセージ性が薄まり、純粋なSFアクション映画となり、3作目ではパワードスーツが登場、4作目はフルCGアニメーションで日本の荒牧伸志監督がメガホンを取った。

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