いちばん怖いのは人間…史上最高の“ヒトコワ”系日本映画5選。気分が悪くなること必至…鑑賞注意の衝撃作をセレクト
text by ニャンコ
チャッキーにジグソウ、そして貞子ー。ホラー映画はこれまで世にも恐ろしい「スター」たちを多数輩出してきた。しかし恐いのは妖怪や幽霊だけではない。隣に住むあの人も、突然「モンスター」に変貌するかもしれないのだ。そこで今回は身近に潜む人間の恐怖を描いた「ヒトコワ映画」5本をセレクト。怖いもの見たさを掻き立てる怪作を紹介する。(文・ニャンコ)
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スクリーンの裏側に渦巻く人間の闇
『Cloud クラウド』(2024)
監督:黒沢清
脚本:黒沢清
キャスト:菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、赤堀雅秋、吉岡睦雄、三河悠冴、松重豊、窪田正孝
【注目ポイント】
デジタル社会に潜む静かな狂気を描いたサイコサスペンス。監督は『CURE』(1997)や『アカルイミライ』(2003)で知られる黒沢清で、キャストには、主演の菅田将暉のほか古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝らが名を連ねる。
世間から忌み嫌われる「転売ヤー」として世間に憎悪を撒き散らしている吉井。彼が知らず知らずのうちに巻いた憎悪の種は、ネットと現実の境界を曖昧にし、やがて吉井自身に牙を剥き始める。負の感情が噴出し人間関係が崩壊していくさまに、既視感を覚えた方も多いはずだ。
そんな本作の注目ポイントは、なんといっても主演の菅田の演技だろう。スマホやパソコンを虚な表情で見つめる吉井。しかし、その瞳の奥には、焦燥や嫉妬、狂気が渦巻いている。菅田は、吉井が抱えた心の闇を繊細な手つきで表現しているのだ。
私たちの承認欲求を満たしてくれるツールであると同時に、人間関係をたやすく破壊しうるインターネット。その恐ろしさを、スマートで洗練された映像とリアルな心理描写で描出した傑作だ。