清純さと残酷さを併せ持つ少女のコワさ

『渇き。』(2014)

小松菜奈
小松菜奈【Getty Images】

監督:中島哲也
脚本:中島哲也、門間宣裕、唯野未歩子
キャスト:役所広司、小松菜奈、妻夫木聡、清水尋也、二階堂ふみ、橋本愛、國村隼、黒沢あすか、青木崇高、オダギリジョー、中谷美紀

【注目ポイント】

『渇き。』は、中島哲也監督が手がけたサイコスリラーであり、家庭の崩壊と少女の闇を描く衝撃作である。

 物語は、元刑事の父・藤島(役所広司)が、失踪した娘・加奈子(小松菜奈)を探す過程を通して展開される。だが、加奈子の行方を追えば追うほど、彼女の内面に潜む異常性が浮き彫りになっていく。

 加奈子を演じた小松菜奈なんと本作が演技初挑戦。清純さと残酷さを併せ持つ少女を見事に演じている。

 人並外れた美しい容姿を持つ加奈子は、人々から羨望と欲望のまなざしを注がれる一方、他人の心を破壊することをためらわない。そんな彼女を観ていると、罪人が処刑されるのを悦んで見世物にした古代の人々を想起させられる。どちらも純粋だからこそ恐ろしい。

『告白』(2010)を手がけた鬼才・中島哲也ならではの極彩色の映像と目まぐるしい編集も効いている。圧のある映像と音響は、登場人物だけではなく観客の精神までも圧迫し、疲弊に導いていくようだ。

 物語は終盤に至ると、もはや何が善で何が悪かさえ曖昧になっていく。しかし、混沌とした展開においても、加奈子演じる小松菜奈は変わることなく美しい。観る者の理性を飲み込むようなストーリーと映像はスリリングの一言だが、体調のすぐれない時に観るのはお勧めできない。

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