ラストが物議を醸した日本映画は? モヤモヤした結末5選。え、こんな終わり!? 賛否を呼んだエンディングをセレクト
「えっ、そんな終わり方!?」——観終わった後に語らずにはいられない、衝撃やモヤモヤが残るラスト。今回は邦画の中でも、ラストシーンが賛否を呼び“物議を醸した”作品を5本厳選。驚きの展開や深読み必至の余韻まで、作品の魅力とそのラストの意味を紐解く。※映画のクライマックスについて言及があります。未見の方はご留意ください。(文・編集部)
——————————
観客に解釈を委ねたラスト
『怪物』(2023)
監督:是枝裕和
脚本:坂元裕二
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、野呂佳代、黒田大輔、田中裕子
【作品内容】
平穏な日々を送っていたシングルマザーの母子や教師たちは、学校で起きた子ども同士のケンカを発端に、事態はメディアを巻き込む騒動へと発展する。やがて嵐の朝、子どもたちが突然姿を消してしまう。
【注目ポイント】
是枝裕和監督と坂元裕二脚本という、現代日本映画界を代表する2人がタッグを組んだ話題作『怪物』(2023)。主演には安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子という実力派が名を連ね、子役の黒川想矢と柊木陽太による繊細かつ力強い演技も話題となった。
物語の舞台は、湖畔にある町で起きた雑居ビル火災。事件をきっかけに、シングルマザーの早織(安藤サクラ)、その息子・湊(黒川想矢)、そして担任教師の保利(永山瑛太)の3人それぞれの視点で物語は語られていく。
息子の異変に気づいた早織が学校に訴えるも、学校側の対応は曖昧なまま。担任の保利は疑惑とプレッシャーに押しつぶされ、やがて職を追われてしまう。一方で、いじめの加害者とされた湊、被害者とされた依里(柊木陽太)――2人の証言は食い違い、真実は霧の中に消えていく。
しかし、物語が多面的に語られるうちに、観客は“怪物”の正体に疑問を持ち始める。加害者にも見えた登場人物たちが、実はそれぞれ傷を抱え、不器用ながらも必死に誰かと向き合おうとしていたことが明らかになる。彼らは決して“怪物”ではなかったのだ。
いじめや問題行動の陰に隠れていたのは、湊と依里の間に芽生えていた深く静かな友情、そして繊細な心の通い合い。それは大人の視線では“問題”としてしか映らず、誤解と偏見にさらされ続けた。しかし、彼らの関係性は、何よりも純粋で、守られるべきものであった。
そして迎えるラストシーン――嵐のなか、2人は“ビッグクランチ(宇宙が再びひとつに戻る終焉)”を信じ、森の奥へと進んでいく。廃電車で夜を明かし、やがて天候が回復する中で、2人が手を取り合って草原を駆ける姿が映し出され、物語は幕を閉じる。
この幻想的なラストは、現実か、それとも死後の世界なのか、観客の想像に委ねられている。生と死の境界に立つような演出は、希望にも絶望にも読み取ることができ、観る者に深い余韻と問いを残す。
『怪物』のラストは、単なる真相の提示ではなく、私たち一人ひとりが持つ“正しさ”や“偏見”を揺さぶりながら、「本当の怪物とは誰なのか?」という普遍的なテーマを静かに突きつけるのである。