不祥事を笑いに変えた「阿久津いじり」
伊勢谷友介(阿久津翔)『翔んで埼玉』
監督:武内英樹
脚本:徳永友一
キャスト:二階堂ふみ、GACKT、伊勢谷友介、ブラザートム、麻生久美子、島崎遥香、成田凌(友情出演)、中尾彬、間宮祥太朗、加藤諒、益若つばさ、武田久美子、麿赤兒、竹中直人、京本政樹
【注目ポイント】
2022年1月。脚本家の三谷幸喜は、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022)の記者会見で、異例の呼びかけを行った。
「オファーを受ける俳優さんたちに言いたいんですけど、自分が『やばいかも』『スネに傷持ってるかな』と思う方は断ってくださいと切に願っております」
現に三谷は、この会見の3年前に、自身が脚本を手がけた大河ドラマ『真田丸』(2016)が出演者の犯罪により配信停止に追いやられるという憂き目に遭っていた。俳優の不祥事は、ドラマの放送が終了しても、多くの人々に迷惑をかけるのだ。
しかし、中には、キャストの不祥事を逆手にひと笑いとった作品もある。それが、『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』(2023)だ。
2019年に公開され大ヒットを記録した『翔んで埼玉』(2019)の続編にあたる本作は、埼玉解放戦線のリーダー麻実麗(GACKT)が、全世界を植民地にしようと企む大阪府知事らと壮絶な戦いを繰り広げる物語で、序盤では、かつてのライバル千葉解放戦線の面々が、海がない埼玉に船を貸与するというシーンが描かれている。しかし、そこには、かつて麻実が一線を交えた千葉解放戦線のリーダー阿久津翔の姿がなかった。
なぜ阿久津はいなかったのか。その答えは、本作の公開から3年前に報じられたニュースを見ればわかる。実は、阿久津役の伊勢谷友介は、大麻所持の疑いで逮捕されていたのだ。
しかし、そんな「大人の事情」を知らない麻実は、阿久津の帽子と杖を持った千葉の海女たちに「阿久津はどうした?」「阿久津に何があった?」と聞いてはいけないことを聞いてしまう。すると、彼女たちは、なんとも気まずそうに話をはぐらかし、早く船に乗るよう麻実に促す。この「阿久津いじり」に、ネットでは「阿久津さんは大人の事情で…」「阿久津は色々察してください」「何でだろうなあ(棒)」などのコメントが集まった。
なお、麻実役のGACKTはその後、Xで「伊勢谷くんには出て欲しかった。いろいろ、大人の事情があるんだろうが。 良い味だすんだ、彼は。 埼玉はヤリきった。 が、唯一の心残りだ。 伊勢谷くん、カムバーック!」と伊勢谷にラブコールを送っている。
『翔んで埼玉3』があれば、是非とも2人の再共演が見てみたいところだ。