死してなお愛され続ける「和久さん」

いかりや長介『踊る大捜査線』

いかりや長介
高木ブー本人のInstagram

監督:本広克行
脚本:君塚良一
キャスト:織田裕二、深津絵里、ユースケ・サンタマリア、内田有紀、伊藤淳史、甲本雅裕、遠山俊也、佐戸井けん太、小林すすむ、北村総一朗、斉藤暁、小野武彦、寺島進、高杉亘、松重豊、ムロツヨシ、伊集院光、稲垣吾郎、岡村隆史、森廉、小泉孝太郎、小木茂光、小栗旬、小泉今日子、柳葉敏郎

【注目ポイント】

 2024年の『室井慎次 敗れざる者』公開により、12年ぶりに復活を果たした『踊る大捜査線』シリーズ。主演の柳葉敏郎は、雑誌のインタビューで、次のように語っていた。

「和久さんはどこかで見てくれている。だから恥ずかしいことはできないと常に感じながらやっていました」

 テレビシリーズ開始当時、柳葉は、キャリア官僚という役柄もあり、織田裕二たち湾岸署の面々にあえて溶け込まず、スタジオの隅で1人で過ごしていたという。そんな折に声をかけてきたのが、和久平八郎役のいかりや長介だった。

「よう、ギバちゃんよ。おめえも大変だよなあ。室井はつらいよなあ」

 さて、そんないかりやが病気で逝去したのは、『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003)の公開翌年となる2004年のこと。没後発売となったDVDには、スタッフロールの最後に「ありがとう、和久平八郎 さよなら、いかりや長介 湾岸署一同」との一文が挿入された。

しかし、和久の存在は、織田裕二演じる青島たちに影響を与え続けた。例えば、2010年公開の『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』では、主人公の青島(織田裕二)が、和久の甥の伸次郎(伊藤淳史)が和久の遺品として譲り受けたという「和久ノート」を見て奮起するというシーンが描かれている。

 また、2012年公開の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』の作中でも、青島が和久の追跡方法を参考に事件を解決に導く描写があるほか、室井が強行犯係のメンバーに対して、「俺は教えられた。”組織の中で生きる人間こそ、信念が必要だ”と」と語りかけたあと、和久の口癖「…なんてな」で締めくくっている。

 朴訥とした演技で『踊る大捜査線』シリーズを支え続けたいかりや長介。彼の魂は、没後20年以上を経た今も人々の心に生き続けている。

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