平成感漂うサイコミステリー
『サイコメトラーEIJI』(日本テレビ系、1999)
脚本:小原信治
演出:堤幸彦、猪股隆一、大根仁
出演:松岡昌宏、大塚寧々、工藤静香、井ノ原快彦、小原裕貴
【作品内容】
不良高校生の明日真映児(松岡昌宏)は、特殊能力“サイコメトリー”を持っていた。ある日、親友の田宮章吉(井ノ原快彦)、葛西裕介(小原裕貴)とともに道を歩いていると、警視庁の美人刑事・志摩亮子(大塚寧々)と出くわす。
偶然彼女とぶつかったことで残留思念を読み取った映児は、警察しか知らない女子高生連続拉致絞殺事件の情報を口走ってしまう。映児の能力に気づいた志摩は、捜査に協力するよう依頼するが…。
【注目ポイント】
触れた「物」や「人」に刻まれた記憶の断片を読み取る特殊能力、“サイコメトリー”をモチーフにした『サイコメトラーEIJI』(日本テレビ系)。原作は、「週刊少年マガジン」(講談社)で連載された安童夕馬/朝基まさしによる同名コミックで、その思い切った描写や独特な世界観で読者の心を射止め続けてきた。
本作(第1シリーズ)の演出を担当したのは、堤幸彦。原作改変はあるものの、のちに世に出る『ケイゾク』(TBS系)、『TRICK』シリーズ(テレビ朝日系)、『SPEC』シリーズ(TBS)との血筋を感じる、堤幸彦ワールドの入門的な作品でもある。
爆弾テロによる無差別連続火だるま事件や、謎の紙袋パーティで横行される殺人ゲームなど、各エピソードに溢れるサイコパスみは心のダメージ必至。なかでも、“永久欠番”とされるCASE3「ボクを殺さないで」は、群を抜いて異常である。
植物人間状態の小学生の双子の兄が、生き霊となって弟に取り憑く。そして、遠足中の送迎バス内で、次々と同級生を虐殺していく…という話なのだが、そのヘビーで思わず後退りしてしまう内容は、当時もかなり反響があったようだ。
刑事が関わる事件解決モノは、そのほとんどが連続して“他者の事件”を紐解いていくものだが、本作ではクラスメイトや先生、メインキャラクターなど…。ほぼすべての事件で主人公たち周りのごく身近な人たちが巻き込まれ、加害者ないし被害者になっていくのがなんだかやりきれない。
そんなストーリーの惨さもさることながら、クラブのようなバックミュージックや個性的なアイキャッチなど、どことなく香る平成感も心惹かれるポイント。令和の『サイコメトラーEIJI』も、ぜひ観てみたいものだ。