原作の複雑な構成をすっきりさせた映画版の離れ業
『白夜行』(2010)
監督:深川栄洋
脚本:深川栄洋、入江信吾、山本あかり
原作:東野圭吾
キャスト:堀北真希、高良健吾、船越英一郎、戸田恵子、田中哲司
【作品情報】
大阪のとある廃ビルで質屋社長の他殺体が発見される。その後、事件は被疑者死亡のまま送検される。被害者の息子と容疑者の娘は別々の道を歩んでいたが、成長した二人の周囲で次第に奇妙な事件が続発し、過去の事件とのつながりが浮かび上がっていく。
【注目ポイント】
東野圭吾の同名小説を原作に映画化した『白夜行』は14年前の殺人事件をきっかけに互いを守り合いながら暗い夜を生きる亮司と雪穂の切なくも悲しい運命を描いた物語。
誰にも知られることのない秘密を共有しながら生きてきた二人が成長し、亮司は裏社会の仕事をしており、雪穂は華やかな表舞台で成功を収めるという対照的な姿を見せていた。しかし、刑事・笹垣は執拗に二人の過去を追い続け、その影は常に二人に付きまとう。やがて、過去の事件が再び表面化する兆しを見せる中、二人は最後の手段を選ぶことになる。
どちらの作品も亮司の自殺という共通の結末を迎えるが、そこに至るまでの経緯や、雪穂の反応には大きな違いがある。
映画版では、雪穂が経営するブティック「R&Y」の名前から笹垣は亮司が近くにいることを察知する。そして屋上で発見された亮司は、笹垣の目前で飛び降り自殺を遂げる。その光景を目の当たりにした雪穂は一瞬悲しげな表情を見せるものの、やがて何事もなかったかのように笑顔でブティックへと戻っていくのだ。小説の複雑な構成を、よりシンプルに再構成している印象を受ける。
一方、原作では雪穂のブティック「R&Y」の記念すべき日に、亮司はサンタクロースに扮して姿を現すも、笹垣の追跡が自分に迫っていることを悟っていた。やがて、逮捕が目前に迫ったことを察した亮司は、雪穂を守るために飛び降り自殺を図る。彼の胸には鋏が突き刺さっていた。遺体を前にしても、雪穂は微塵の動揺も見せず、他人を装うその姿に、二人の間にあった秘密や、誰にも理解されることのない純愛を守り通すための最後の決断とも言える結末となっている。
【著者プロフィール:阿部早苗】
仙台在住のライター。2020年にライターデビュー。これまで東日本大震災での企業活動をまとめた冊子「こころノート」第2弾、プレママ向けフリーペーパーを執筆した他、エンタメニュース、福祉関連記事、GYAO トレンドニュース、地元グルメライターなどWEB媒体を中心に執筆。映画なしでは生きられないほど映画をこよなく愛する。
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【了】