渡辺翔太の演技はなぜ記憶に残るのか? ドラマ『なんで私が神説教』の聞き逃せない”口癖”の偏差とは? 稀有な魅力を徹底考察

text by 加賀谷健

現在放送中のドラマ『なんで私が神説教』(日本テレビ系)にて、レギュラー出演中の渡辺翔太(Snow Man)。主人公の「神説教」が強烈なインパクトを与えるのと対照的に、さりげなくも確かな存在感を放っている。今回は渡辺翔太の「声」からドラマの魅力を紐解く。(文・加賀谷健)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:加賀谷健】

コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修
クラシック音楽を専門とする音楽プロダクションで、企画・プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメン研究」をテーマに、“イケメン・サーチャー”として、コラムを執筆。 女子SPA!「私的イケメン俳優を求めて」連載、リアルサウンド等に寄稿の他、CMやイベント、映画のクラシック音楽監修、解説番組出演、映像制作、 テレビドラマ脚本のプロットライターなど。
2025年から、アジア映画の配給と宣伝プロデュースを手がけている。
日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。

初登場場面でエキストラかと思わせる渡辺翔太

『なんで私が神説教』公式Instagramより
『なんで私が神説教』公式Instagramより

『なんで私が神説教』は、冒頭場面から広瀬アリス演じる主人公・麗美静のモノローグが続く。2年間もニート生活に甘んじた内向的な主人公キャラの性格設定や状況説明を首尾よく運ぶ導入として、こうした冗長なモノローグ使用は近年のテレビドラマの常套手段である。一方、映像表現である以上は何か視覚的工夫も早いうちに施しておきたいところ。

 すると通勤電車の場面でカメラが手持ちになる。何とも寄る辺ない動きで電車内を進むが、映像的に効果的。中景では高校教師として初出勤する静がつり革につかまっている。

 同じ車両の後景には、エキストラにしてはやたら存在感があるベージュ色のスーツ姿の男性が…。憂鬱そうな表情を浮かべる静の半ば愚痴でしかないモノローグは依然として続く中、フレーム外から「席空きましたよ」と新鮮な声色がかぶせられる。

 その声の持ち主はスーツ姿の男性。声が聞こえた方向へ静が視線を遣る。エキストラかと思わせたその人は、我らがしょっぴー(渡辺翔太の愛称)! 静の勤務先である私立名新学園の数学教師・浦見光を演じる。

 初登場場面で後景にいた彼はその存在を画面内で見え隠れさせながら、隠しきれない存在感の表明としてフレーム外から麗しい声を伝えてくれる。さりげないけれど、これはサプライズ性がある。ドラマ開始から3分30秒ほど、奥行きある画面上に聞こえた完全なる不意打ちだった。

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