『青島くんはいじわる』とは対照的に甲高い音域設定
曲がったことが嫌いな熱血キャラである浦見は、近くに立っているお婆さんに席が空いたことを教えてあげていたのだ。ところが空席にすかさず座ったのはふてぶてしい雰囲気のギャル。
それを見た浦見が「ここは優先席です」と注意する。カメラが初めて浦見に寄る。手持ちカメラの前進からこの寄りまでの流れがいい。ギャルは自分もまた妊婦だと反論。論破され「えっ」と呆気にとられるばかりの浦見を捉えるカメラが、今度は逆に寄る辺なく引いていく。
場面の視点が静に戻る。フレーム外からは謝罪する浦見の声が低いボリュームで聞こえる。主人公のモノローグで始まる本作は、渡辺翔太の声を音響処理しながら、それを一つひとつ印象的にタグ付けしていくドラマなのかもしれない。
場面は替わり、職員室での挨拶を済ませた静のところへ浦見が晴れやかに「おはよ!」と声をかける。声がでかい。かなりうるさい。熱血かつストレートな天然キャラでもある浦見は歯切れよい言葉を配置する。
減少傾向にある入学者を増やす試作考案もまたこの学校に勤務する教師の職務だが、他の教師相手にiPadで自らデザインしたコスプレ風制服をプレゼンする浦見の狙いが的外れなところはお茶目でもある。
後輩教師・林聖羅(岡崎紗絵)にiPadの表示を縮小されて、慌てて「ああぁぁぁ」と発する声もデクレシェンドにしてはやたらでかい。なおかつ甲高い。Snow Manのメインボーカルを担当することも多い渡辺は、基本的に中音域の人である。
渡辺にとっては本作のひとつ前に出演した主演ドラマ『青島くんはいじわる』(テレビ朝日系、2024)では、クールな役柄に合わせた低音がむしろ魅力的だった。同作とは対照的に本作では、本人の音域に合わせた声色設定にしながらも甲高い声の響きが特徴的である。