ドラマ出演で初めて発した口癖
この高音をいかしたとっておきのボイスタグがある。それは慣れない学校業務で顔がやつれた静を見た浦見が反応する場面。顔を覗き込んだ浦見が「うわっ」と発する。単なるリアクションのセリフとして聞き流すことはできる。
でもこれは役柄を超えて、渡辺特有の口癖を取り込んだ重要かつ端的な表現性なのである。Snow Man初の冠番組『それSnow Manにやらせて下さい』(TBS系)やSnow Man公式YouTubeチャンネルなど、バラエティー出演するときの渡辺は、とにかく「うわっ」を口にする。
美味しいものを食べる食レポで「うわっ」、極限ロケで恐怖を感じて「うわっ」、ひたすら同語反復する。
こうした渡辺の口癖が一般的に知られるようになったのが、『週刊ナイナイミュージック』(フジテレビ系)2024年10月30日放送回だ。「食レポのレパートリー『うわっ』しかないのがかわいらしい」とコーナー名になる「うわっ」は、おそらくドラマ出演で初めて発したんじゃないだろうか?
第2話で浦見がプリクラを撮ることに驚いてリアクションするときにも「うわっ」。初出よりはややまろやかに発音され、バラエティー同様、ドラマでもその響きと語感を微妙に変えることで豊かなアクセントを置く。
本作は渡辺翔太によるボイスタグ的ドラマであると同時に、彼の口癖の偏差も演技のバリエーションとして楽しむことができる画期的作品だとぼくは思っている。
よりマニアックな語感に導かれるなら、第2話にもうひとつ印象的な響きがある。学生服考案を日課にする浦見が職員室でパソコンを操作している。デザインのレイアウトに迷いながら「どの辺にしよぉかなぁ〜」と言う。
「なぁ~」と伸びる語尾もまた渡辺らしい語感である。2023年の大晦日にゲリラ的に開始したInstagramライブでファンが集まるのを待つ渡辺が「誰か見にこないかなぁ」と言っていたフランクな響きを思い出した。
口癖「うわっ」の初出をさらりと極め、さらにマニアックな語感でしなやかにまとめあげてしまう。さりげない目配せでファンを飽きさせない。連ドラ初単独主演作『先生さようなら』(日本テレビ系、2024)で美術教師を演じた渡辺にとって教師役を再演する本作では、こうした目配せがいくつ聞けるのかと毎話が楽しみになる。
(文・加賀谷健)
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