トップクラスの成功に導いた当代屈指の芸達者
吉高由里子
朝ドラ主演作:『花子とアン』(2014)
【注目ポイント】
2014年3月から9月にかけて放送されたNHK連続テレビ小説『花子とアン』で、ヒロイン・安東はなを演じたのは、当時26歳の吉高由里子。オーディションを経ずに主演に抜擢されるという異例の形での起用だった。
本作は、戦前から戦後にかけて活躍した日本語翻訳家・村岡花子をモデルに、波乱に満ちた人生をたくましく歩んだ女性の成長と挑戦を描いた物語。吉高は、芯の強さとしなやかさを併せ持つヒロインを、繊細かつ情熱的に演じ切った。
放送当時、最高視聴率は25.9%を記録。視聴率・評価ともに極めて高く、当時の朝ドラ10年の歴史の中でもトップクラスの成功を収めた作品となった。
吉高は役作りにも徹底してこだわった。実生活では左利きだが、モデルとなった村岡花子が右利きであったため、撮影中だけでなく日常の食事でも右手で箸を使う練習を重ねるなど、細部にまで心を砕いた演技が話題となった。その努力の結実として、ザテレビジョンドラマアカデミー賞・主演女優賞を受賞している。
朝ドラでの主演以降、吉高はスクリーンやテレビドラマでも存在感を発揮し続けている。映画『ユリゴコロ』(2017)や『検察側の罪人』(2018)など、話題作での演技が高く評価され、役の幅をさらに広げていった。
テレビドラマでは、『わたし、定時で帰ります。』(TBS系、2019)で働く女性のリアルを等身大で演じたかと思えば、『最愛』(TBS系、2021)ではサスペンスの中で揺れる複雑な女性心理を巧みに表現。ミステリアスでありながら情感あふれる演技により、女優としての真価を改めて印象づけた。
2024年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』で、主人公・紫式部を熱演。平安時代の知性と気品を纏いながら、女性としての強さと哀しみを丁寧に表現し、その演技は多くの視聴者の心に深い余韻を残した。
キャリアを重ねるごとに表現の幅を広げ、現代劇から時代劇まで自在に演じ分ける吉高由里子。その多彩な魅力と確かな演技力によって、今や日本を代表する女優のひとりとして、揺るぎない地位を築いている。
(文・阿部早苗)
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