今、もっとも演技が上手い30代女優は? 日本の映画界を牽引する宝石たち。芝居に定評のある天才をセレクト&魅力を深掘り解説

text by 野原まりこ

日本の映像作品が世界で躍進している昨今。良作には必ずと言っていいほど、良い女優が出演している。彼女たちの魅力を紐解いていくと、スターダムに上り詰めた道程にはアツいものがある…。そこで今回は、今最も演技が上手い30代の女優を5人厳選して、その魅力を解説していく。(文・野原まりこ)

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自らの手で道を切り拓いた努力型女優

吉岡里帆

吉岡里帆
吉岡里帆【Getty Images】

 元祖たぬき顔女優・吉岡里帆。バツグンのプロポーションと愛らしい顔立ちで“男性人気”は強い…。そんなイメージを持つ方も多いだろう。しかし、実は多くの人には知られていない面白い経歴の持ち主。彼女こそ根性と実力で成り上がってきたアツい女優魂を持つ、女優の中の女優なのだ。

 人気女優といえば、街中でスカウトされて華々しく芸能界デビューするというエピソードが鉄板。しかし吉岡里帆は、大学時代に演劇にのめり込み、小劇場の舞台に立つ。それからバイトで貯めたお金で、地元の京都と東京を行き来しながら養成所に通っていたという。

 まさに血のにじむような努力で、自らの夢を勝ち取った。そんな吉岡のブレイクのきっかけとなったのが、波瑠が主演を務めた朝ドラ『あさが来た』(NHK総合、2015)だが、個人的にはその後出演したドラマ『カルテット』(TBS系、2017)での存在感が脳裏に焼き付いている。

 同作で演じた来杉有朱は魔性の女。最終回では外国人男性と腕を組み、薬指に指輪を光らせて「人生、チョロかった!アハハハハ!」と高らかに笑うシーンは語り草となっている。一方で、映画『ハケンアニメ!』(2022)で、新人アニメ監督としてボサボサの髪の毛に猫背で画面に向かっていたとかと思えば、映画『Gメン』(2023)では声を張り上げてボケまくる…。

 振り幅の多い役に観てるこちらも翻弄されてしまうのだが、あえて意地悪な言い方をすれば、「顔ありき」の役柄が多いのも特徴だ。たとえば、先述した作品では、顔が可愛い魔性の女、顔が可愛い女性監督、顔が可愛い女教師…など、可愛いことが前提にある役だった。

 しかし見方を変えれば、むしろそれが吉岡里帆が唯一無二である証左ではないだろうか。

「女優」といえば、多種多様の美しさを持つ人たちの巣窟。しかし芸能界広しといえど、「顔」をひけらかすブランディングを仕掛ける人はそういない。女性からの好感度は下がり、男性からは色眼鏡で見られる…。

 吉岡はそうしたリスクを顧みず、“鼻につく”役を真正面から受け止めたことで、たとえ同性から反感を買う役柄でも「吉岡里帆だから許せる」域にまで到達した。

 これは相当なガッツと気合いがなせる技だ。これから、今以上に彼女が評価される時代が来るに違いない。

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