業界内でも高評価のバイプレイヤー

夏帆

　デビュー当時から目覚ましい活躍を見せてきた夏帆。圧倒的な透明感と存在感で立て続けに映画の主演を飾り、CMやドラマでも彼女の姿を見ない日はなかった。しかし、今では名バイプレーヤーとしての印象の方が強い。

　中でも一際強いインパクトを残したのは、社会現象にもなったドラマ『silent』（フジテレビ系、2022）だ。本作で夏帆が演じたのは、聴覚障害者の女性・桃野奈々。目黒蓮演じる若年発症型両側性感音難聴を患う佐倉想に思いをよせ、川口春奈演じる紬の恋敵となる。

　奈々は、紬と想が思い合っていること知り、「想くんがかわいそうだから優しくしてくれるだけ」と無情にも伝える。そして、想の声を知っている紬に嫉妬し、心無い言葉を投げかける。綺麗事だけではない役柄を、巧みな手話と豊な表情で演じ、その演技力が高く評価された。

　一方で、お馴染みのバカリズム作品では、どこにでもいるような女性を軽やかに演じている。日常の中に溶け込む自然体な演技は、本当にセリフを喋っているのかをつい疑ってしまう。かと思えば、不良少女や激しいラブシーンを演じ、その振り幅に驚かされる。

　彼女の評価は業界内でも話題を呼んでいるほど。主演も助演もできる、今最も優れた女優の1人である。

（文・野原まりこ）

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