時にかわいらしく、時に妖艶に微笑む
麻生久美子『魔物마물』(テレビ朝日系)
テレビ朝日と韓国の制作会社がタッグを組んだ日韓共同制作のオリジナルドラマ『魔物마물』(テレビ朝日系)。弁護士の華陣あやめ(麻生久美子)と殺人容疑のかかった源凍也(塩野瑛久)が織りなす、禁断のラブサスペンスだ。
刺激的なテーマもさることながら、まず何と言っても、麻生と塩野の2ショットがこの上なく美しい。年齢差のある設定だが、それを忘れてしまう瞬間があるほど、時にかわいらしく、時に妖艶に微笑んで見せるあやめは、麻生のために用意されたといって差し支えないようなハマり役だ。
だが、あやめは美しいだけの人物ではない。法曹界という男社会の中で数々の理不尽を受けながらも戦い、両親からは不妊治療の末に子どもを授かった妹と比較されてきた。外も内も敵だらけの環境でも自分を見失わず耐え抜く様は凛としていて気高く、ゆえにふとした瞬間に覗かせる孤独は色濃い。
結婚している上に自身が弁護を担当している凍也との恋に、抗いながらも落ちていくあやめ。そこには凍也への愛情もあるだろうが、同時に自分を都合よく扱う同僚や、理解のない家族、そして女としての武器を用いて生きてきた凍也の妻(を演じる北香那も最高にいい)への当てつけもあったのだろう。優越感のようなものが見え隠れしていた。
『時効警察』(テレビ朝日系、2006)をはじめとしたコメディ作品の印象が強い麻生。凍也がついに本性を現し泥沼化していく本作では、そのコメディエンヌとしての一面は鳴りを潜めている。まだまだ麻生の新たな表情が観られそうだ。