傷ついた心をケアするロボットが、再生の道を照らしてくれる
『ベイマックス』(2014)
監督:ドン・ホール、クリス・ウィリアムズ
脚本:ジョーダンロバーツ、ロバート・L・ベアード、ダン・ガーソン
原作:マン・オブ・アクション『ビッグ・ヒーロー・シックス』
【作品内容】
両親を幼いころに亡くしたヒロには、いつも味方になってくれる優しいお兄さんのタダシがいた。彼にとって兄は最も大事な存在だったのだが、大学で起きた爆発事故により亡くなってしまう。心に深い傷を負ったヒロはふさぎ込んでしまい、孤独に押しつぶされそうになっていた。そんな彼の前に現れたのが、タダシが作ったケアロボット・ベイマックス。
ベイマックスは、ヒロの心にある傷を感じ取り、真面目に健気にケアをしてくれ、彼は徐々に明るさを取り戻していく。元気を取り戻したヒロは、兄の死の秘密を解き明かそうと動き出す。
【注目ポイント】
ディズニーがマーベルコミックの「Big Hero 6」を原案に製作したアニメーション映画『ベイマックス』(原題:Big Hero 6)は、日本の東京とアメリカ・サンフランシスコを融合させた架空都市“サンフランソウキョウ”を舞台に展開される、近未来アクション&ヒューマンドラマだ。
主人公のヒロ・ハマダは日本人の少年。作中には鳥居や和風の建築、カタカナの看板など、日本文化が随所にちりばめられており、日本人の観客にとってはどこか親しみを覚える世界観が広がっている。
物語序盤、ヒロにとって兄タダシの存在は、心の拠り所であり、人生の道しるべのような存在だった。そんなタダシを事故で突然失うシーンは、初めて観た時の衝撃が今でも忘れられないほどだ。14歳という多感な時期に、唯一の理解者を失う喪失感はあまりにも大きく、観ているこちらも胸を締めつけられる。
そんなタダシの“思いやりの遺産”として登場するのが、ケアロボットのベイマックス。彼は単なる医療ロボットではなく、ヒロの心の傷にまで寄り添おうとする存在だ。その丸いフォルム、柔らかい動き、そして何よりも真正面からヒロに向き合うひたむきさは、観る者の心を癒してくれる。ベイマックスとヒロの間に少しずつ築かれていく絆、そしてラストでの切なくも優しい展開は、多くの人の涙を誘うだろう。
特に印象的なのは、ベイマックスの中にタダシの“優しさ”がしっかりと息づいていること。兄の思いが、無機質なロボットに受け継がれていく様子に、ただただ涙がこぼれた。
映画を観終えた後、「こんなロボットが自分のそばにいてくれたら」と思った人も多いはず。ベイマックスは、疲れた心をそっと抱きしめてくれるような存在であり、“一家に一台”欲しくなる癒し系ヒーローそのものだ。