「愛すべきポンコツ」は嘘だった

カン十郎の裏切り

 

ONE PIECE
ONE PIECE【Getty Images】

 2018年から2022年まで、4年の長きにわたって連載されたワノ国編。ルフィたち「最悪の世代」の3人が、海賊の頂点に君臨する四皇2人に立ち向かう様子に、胸を熱くした読者も多いことだろう。

 さて、そんなワノ国編は、サムライや忍者、ヤクザといった個性豊かなキャラクターが次々と登場した章としても知られている。中でも印象的なキャラクターが、ワノ国のかつての家臣団である赤鞘九人男の1人、”夕立ちの”カン十郎だ。

 カン十郎は、ワノ国編の中心的人物である錦えもんの唯一無二の親友。絵を実体化させられる「フデフデの実」の能力者で、当初は、巨大な毛筆を駆使して戦うものの絵が下手すぎて役に立たないという「愛すべきポンコツキャラ」として描かれていた。

 しかし、ワノ国編の途中、彼は重大な秘密を打ち明ける。それは、自分が敵の黒炭オロチから送り込まれたスパイであり、かつて殺されたワノ国の将軍、光月おでんの死にも関与していたというあまりにも酷い事実だった。

 加えて、「絵が下手」という設定も彼の演技だったことが判明。打ち明けた直後に、実物と見まごうような見事な鶴を描き、1人ボスであるオロチたちが待つ鬼ヶ島へ飛び立っていった。

 しかし、初登場時からすでに伏線が張られていた。例えばカン十郎が絵を描く際の筆の持ち手。本性を現す前のシーンでは、食事などで右手を使用しているのに対し、絵を描く時には左手を使用している。つまり、あえて利き手でない方の手で絵を描いたことが分かるのだ。

 カン十郎の好物が「ちしゃ(レタス)」であるという点も注目すべきヒントだろう。「ちしゃ」というと、落語好きなら古典落語の「ちしゃ医者(夏の医者)」を思い出す方も多いだろうが、「ちしゃ」の花言葉は実は「冷酷な人」で、カン十郎の本性を表している。

 また、二つ名の「夕立ち」もヒントになっていた。作者の尾田栄一郎は質問コーナーSBSで、カン十郎の二つ名である「夕立ち」について、「血の雨を降らせる」という意味があると語っている。また、深読みすれば「夕立ち」とは夏の午後に降る激しい雨を指す。「光」も「月」もない空から降るということを考えると、ワノ国の将軍家である「光月」家を裏切った存在としてこれ以上ない異名だったはずなのだ。

 そんなカン十郎、最後は『黒炭心中』なる絵を描いて絶命している。親友を数十年騙した千両役者には似つかわしくないあまりにもあっけなく哀しい最期だった。

(文・編集部)

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【了】

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