藤井道人監督が描く、日本版クライムサスペンス
『最後まで行く』(2023)
監督:藤井道人
キャスト:岡田准一、綾野剛、磯村勇斗
【作品内容】
年の瀬の12月29日、危篤の母のもとへ向かう刑事・工藤は雨の中で事故を起こし、相手を死亡させてしまう。焦った工藤は遺体をトランクに隠し現場を離れるが、遺体処分を試みる最中、県警本部の監察官・矢崎から「人を殺したのを知っている」とのメッセージが届く。
【注目ポイント】
映画『最後まで行く』(2023)は、韓国で大ヒットを記録した同名のクライムサスペンスを、『新聞記者』(2019)や『ヤクザと家族 The Family』(2021)で知られる藤井道人監督がリメイクした作品だ。主演は実力派俳優の岡田准一が刑事・工藤役を務め、彼を執拗に追い詰める県警本部の監察官・矢崎役を綾野剛が演じている。
物語は、年の瀬の12月29日、危篤の母のもとへ急ぐ工藤が、雨の中で交通事故を起こすところから幕を開ける。動転した工藤は、誤って死亡させてしまった男の遺体を車のトランクに隠し、その場を立ち去る。だが後日、「お前が人を殺したことを知っている」と書かれた謎のメッセージが届き、監察官・矢崎の登場により、事態は一気に緊迫の度を増していく。
撮影は真冬の1月に行われ、冒頭の交通事故シーンでは氷点下に迫る寒さの中、人工の雨を浴びながらの撮影が続いた。岡田准一は「夜通しずぶ濡れでの撮影が続き、寒さと疲労で心身ともに限界だった」と語っており、特にこの冒頭シーンは5日間にも及ぶ過酷なロケだったという。
終盤の対決シーンでは、綾野剛がウエットスーツを着用して撮影に臨んでおり、「これがなければ最後まで行けていませんでした」と述懐。俳優陣が極限まで身体を張って挑んだことが、作品の緊張感とリアリティをさらに引き立てている。
また、ドラム缶が車に落ちる衝撃的な場面では、CGに頼らず実物を使用するという藤井監督のこだわりが貫かれた。岡田のリアルな反応を引き出すため、実際にドラム缶を落とすという大胆な演出が施されている。
岡田准一と綾野剛の火花散る演技、そして藤井道人監督の緻密かつ容赦ない演出が重なり、本作は日本版サスペンス映画の新たな傑作として、強烈な印象を残す仕上がりとなっている。