リアルな人間味を加えた父と娘の距離

クリント・イーストウッド×アリソン・イーストウッド
『運び屋』(2018)

クリント・イーストウッド×アリソン・イーストウッド
クリント・イーストウッド×アリソン・イーストウッド【Getty Images】

監督:クリント・イーストウッド
脚本:ニック・シェンク
原案:サム・ドルニック
出演:クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、アンディ・ガルシア、アリソン・イーストウッド

【作品内容】

 家族を顧みず仕事一筋で生きてきたアール・ストーンは、90歳となり無一文で孤独な日々を送っていた。自宅も差し押さえられたある日、車の運転だけという簡単な仕事を持ちかけられるが、それは実はメキシコの麻薬カルテルの「運び屋」だった。

【注目ポイント】

 映画『運び屋』(2018)で、巨匠クリント・イーストウッドは、自ら監督と主演を務め、実娘アリソン・イーストウッドと34年ぶりに親子共演を果たした。

 90歳の老人が麻薬カルテルの「運び屋」としてスカウトされ、密輸を行うという衝撃的な実話をもとにした本作でイーストウッドが演じる主人公アール・ストーンは、かつては花の品評会で賞を獲るなど、名うての園芸家だったが、時代の流れに取り残され、家族とも疎遠になり、生活に困窮している。そんな中、麻薬の運び屋として第二の人生を歩み始める…というストーリーだ。

 本作でアールの娘・アイリスを演じたのは、クリント・イーストウッドの実娘であるアリソン・イーストウッド。彼女が父と共演するのは、1984年公開の『タイトロープ』以来、実に34年ぶりであった。アイリスは、家庭より仕事を優先してきた父親に心を閉ざし、長年会話すらなかったという難しい役柄だ。

 この共演は、スタッフからの提案がきっかけだったという。家族との愛憎入り乱れた関係性をテーマにした本作に打ってつけのキャスティングと言えるだろう。

 イーストウッド自身、ハリウッドの第一線で活躍するなかで家庭を犠牲にしてきた部分があると言われており、実人生でも娘との距離があった時期を経験している。実際の親子だからこそ演じられる距離感と、再び手を取り合おうとする不器用な歩み。『運び屋』の物語にリアルな人間味を加えたのは、まぎれもなくイーストウッド親子の存在だった。

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