娘から父に宛てたラブレター
ユアン・マクレガー×クララ・マクレガー
『ブリーディング・ラブ はじまりの旅』(2023)
監督:エマ・ウェステンバーグ
脚本:クララ・マクレガー、ヴェラ・バルダー
出演:ユアン・マクレガー、クララ・マクレガー、ヴェラ・バルダー、デヴィン・マクダウェル
【作品内容】
アメリカ南西部の砂漠を旅する父と娘。疎遠だった2人は、娘のある出来事をきっかけに再会し、父は娘を連れてニューメキシコ州へ向かう。逃げようとする娘と、不器用に向き合う父。旅の終盤、父の本当の目的を知った娘は、最後の反抗を試みる。
【注目ポイント】
俳優ユアン・マクレガーが、実の娘であり俳優・プロデューサーでもあるクララ・マクレガーと親子共演を果たした映画『ブリーディング・ラブ はじまりの旅』(2024)。本作は、疎遠だった父と娘が再会し、アメリカ南西部を舞台に心の距離を縮めていく愛と回復への旅を描いた作品である。
実生活でも、ユアンとクララには一時期確執があった。長年連れ添った妻との離婚、再婚という大きな変化の中で、親子関係にもひずみが生じた時期があったのだ。だが、その溝を埋めるようにクララが父に宛てたラブレターともいえる脚本が、本作の出発点となった。
劇中では、モーテルのプールに娘(クララ)が一人で飛び込み、幼い頃の父との思い出を回想する印象的なシーンが登場する。子どもの頃、一緒に野球を観に行った日や遊んでくれた記憶など、その懐かしさが蘇った瞬間、現在の父(ユアン)が突然プールに飛び込む。
まるで過去と現在が交差するように戯れる2人の姿が描かれており、実際に親子であるからこそのリアルな愛情がにじむ瞬間となっている。他にも、クララの妹でユアンの次女エスター・ローズ・マクレガーもカメオ出演している。
実の娘と手を取り合って生み出した本作、親子の絆に心を揺さぶられる一作だ。