これぞ”あざとかわいい”の最適解…芳根京子の演技に視聴者が悶絶するワケ。ドラマ『波うららかに、めおと日和』徹底考察
ドラマ『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)が放送中。本作は、昭和11年を舞台に、歯がゆくも愛らしい“新婚夫婦の甘酸っぱい時間”を描いている。今回は、本作の主人公・なつ美を“あざとさゼロ”で演じきる芳根京子の表現力に注目しながら、作品の魅力に迫る。(文・かんそう)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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現代人を癒す“薬箱”のような作品
フジテレビのドラマ『波うららかに、めおと日和』(2025)は、昭和11年を舞台に、恋愛経験ゼロの江端なつ美(芳根京子)が帝国海軍中尉・江端瀧昌(本田響矢)との新婚生活を通じて成長する姿を描いた「うぶきゅん」ラブストーリーだ。
不倫だの略奪だの裏切りだの殺人だの、目と耳を覆いたくなるようなセンセーショナルでショッキングなドラマが増えているなか、その真逆を行くこのドラマは疲れ切って身も心もズタボロになった現代人の心を癒やす“薬箱”のようなドラマだ。
が、こういうドラマは下手をすれば「狙いすぎ」と批判されかねない、非常に難しいドラマでもある。ただ、ファンの喜ぶようなキュン展開をてんこ盛りにしてSNSでのバズを狙えばいい、という話ではない。なぜそういうシーンに至ったのか、その過程、奥行きをしっかりと描かなければ舌の肥え過ぎた視聴者を納得させることができないからだ。
しかし、ドラマ『波うららかに、めおと日和』はそういった観点から見ても非常に丁寧に、愛を持って作られている素晴らしいドラマだと思った。
そしてそれを担っているのは間違いなく、主人公・なつ美のキャラクターと、それを演じる芳根京子の演技力があってこそだろう。本記事では、なつ美のキャラクターの魅力と、芳根京子の女優としての魅力を融合させ、両者がどのように視聴者の心を掴んでいるかを詳しく探っていきたい。
難役を成立させた芳根京子の説得力
なつ美の最大の魅力は、恋愛経験がなく男性免疫ゼロの圧倒的な「ピュアさ」にある。異性に触れただけで顔から火が出るほど赤くなり、接吻でもしようものなら頭に血が昇って興奮のあまり気絶してしまう。この異常とも言えるピュアさが我々を惑わし、狂わせるのだ。
しかし、このなつ美のキャラクターは分かりやすいからこそ難しい。並の女優であれば、この手のキャラクターは「あざとすぎ」と言われ、特に女性からの反感を買ってしまいかねない。だが、芳根京子は違う。1つ1つのリアクションや動きを中途半端にならず120%の力で「やり切っている」のだ。
特に顕著なのが、「表情の豊かさ」だ。1秒ごとにコロコロと変わるその表情は、まさに百面相、いや千面相と言っても過言ではない。もはや、かわいいだけでなく、面白というの域まで行ってしまっている。
第1話で炸裂した“ピュアすぎる初夜”
その魅力が早くも爆発していたのが1話。ほぼ初対面にも関わらず急に夫婦となった瀧昌との「初夜」を迎えなければいけないシーン。
なつ美「えっ、えっと…初夜とはなにをするんですか!?」
布団ガバッ!
瀧昌「はぁっ!?」
なつ美「あっ本来聞くべきではないと分かっていますでも昨日わたしが寝たせいで初夜? ができなかったと思いまして…あっ! でも大丈夫です全て瀧昌にお任せしますので…はいっ(顔を手覆う)」
瀧昌(いや…なにって…男女のアレコレを口で説明なんて無理だッ…!いや…ここは男らしくちゃんとッッ…!)
瀧昌「そう…でっでは………まぐわう…ことです」
なつ美「まぐわう…? ってどんな意味でしたっけ…どこかに辞書が…?」
瀧昌「いっいや知らないのでしたらそのままでッッッッ!!!! ……しょしょsyそっs初夜…という…のは………」
なつ美「はいっ…」
瀧昌「sせ、セッ………………ぷん…などから…まずは…」
なつ美「せっ…ぷん…………………………………はぁっ…………!?」(目玉が飛び出す)
このシーンだけでもいかに『波うららかに、めおと日和』が、芳根京子が最強の女優なのかが分かるだろう。
「かわいい+面白い」
このハイブリットこそ、なつ美が多くの視聴者に受け入れられている要因。それを絶妙なバランスで保ち「本当に何も知らないからこそ生まれる反応」を視聴者なんの違和感も持たせずに演じている。ある意味「非実写的」なリアクションだが、これを現実に落とし込み「自然にやる」というのは簡単なようでなかなかできることではない。まさに「あざとさの無印良品」なのだ。
だからこそ、私はなつ美の一挙手一投足に「がんばれ…がんばれ」と心から応援してしまう。まるで姪っ子の初めての運動会にこっそり参加した親戚のような気持ちでなつ美のことを見守ってしまうのだ。
ジャンルを超えて磨かれた変幻自在の演技力
そして、その変幻自在ぶりは過去の作品でも垣間見ることができる。
NHK朝の連続テレビ小説『べっぴんさん』(2016)で見せた王道のヒロインの顔、映画『累 -かさね-』(2018)での嫉妬と欲望にまみれた顔、ドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』(TBS系、2025)での初々しい顔…。12年を超える長いキャリアと、ジャンルを問わず様々な作品に出演してきたからこそ、そこで培ってきた全てが花開き、今まさに芳根京子は「全盛期」を迎えているのだ。
なつ美を見ていると、芳根京子にこの役を与えてくれた全てに感謝をしたくなる。
ありがとう芳根京子を育ててくれた芳根京子に関わる全ての人間たちよ、芳根京子の父よ、芳根京子の母よ、芳根家を反映させた芳根の始祖よありがとう、芳根京子を育ててくれたあらゆる生きとし生ける生物ありがとう。水ありがとう、米ありがとう、小麦ありがとう、肉ありがとう、魚ありがとう、野菜ありがとう、大地、地球、宇宙ありがとう。誕生してくれてありがとう。森羅万象ありがとうと。
そして、そんな気持ちにさせてくれたドラマ『波うららかに、めおと日和』に最大の感謝を述べつつ、最終回まで責任を持って、なつ美と瀧昌、江端夫婦の行く末を見届けたい。そして絶対に幸せになってもらいたい。いや、私が親戚のオジさんとして、責任を持って2人を幸せにします。
【著者プロフィール:かんそう】
2014年から、はてなブログにてカルチャーブログ「kansou」を運営。記事数は1000超、累計5000万アクセス。読者登録数は全はてなブログ内で6位の多さを誇る。クイック・ジャパン ウェブ、リアルサウンド テックなどの媒体でライター活動を行うほか、TBSラジオで初の冠番組『かんそうの感想フリースタイル』のパーソナリティも務め、2024年5月に初書籍『書けないんじゃない、考えてないだけ。』を出版した。
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