史上最高の日本の戦争映画は? 海外からの評価が高い傑作5選。世界が絶賛...歴史に残る名作をセレクト

text by 阿部早苗

2025年は戦後80年という節目の年となる。未だに世界では戦争が行われている国々があり、その悲惨な状況には目を覆いたくなるほどだ。また、戦争は人ごとではなく、自分たちの身にも起こる危機感を抱かなければ、平和を維持するのは難しいだろう。そこで、今回は海外での評価が高い日本の戦争映画を5本紹介する。(文・阿部早苗)

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日英の個性派たちが競演する異彩の戦争映画

『戦場のメリークリスマス』(1983)

坂本龍一
坂本龍一【Getty Images】

監督:大島渚
脚本:大島渚、ポール・マイヤーズバーグ
出演者:デヴィッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、ビートたけし、ジャック・トンプソン、ジョニー大倉、内田裕也

【作品内容】

 第二次世界大戦中の日本軍捕虜収容所を舞台に、イギリス人捕虜セリアズ(デヴィッド・ボウイ)と、収容所の所長である日本陸軍大尉ヨノイ(坂本龍一)の間に生まれる、言葉にしがたい感情と葛藤を描いた異色の戦争ドラマ。文化や価値観の大きな違い、極限の状況下での人間の尊厳、そして触れられぬまま交差する心――そのすべてが静かな緊張感の中で描かれていく。

【注目ポイント】

 日本映画史において、戦争映画としても、国際共同制作作品としても他に類を見ない存在感を放つ本作。1983年の公開以来、今なお世界中で高い評価を受け続けている。

 メガホンを取ったのは『愛のコリーダ』(1976)などで知られる鬼才・大島渚。主演には当時カリスマ的存在だったロックミュージシャンのデヴィッド・ボウイ、そして本作で俳優デビューを果たした音楽家・坂本龍一。トム・コンティや北野武といった、日英の個性派俳優たちが脇を固めた。

 物語の舞台は戦時下のジャワ島。軍の規律と忠誠を絶対視するヨノイと、自由と品位を失わないセリアズ。両者の間に生まれる感情は、単なる敵対関係や友情とは異なる、説明しがたい緊張をはらんでいる。それぞれが背負う国や思想が、互いの人間性の輪郭をより強く浮き彫りにしていく。

 そして本作を語る上で欠かせないのが、坂本龍一による音楽だ。静かに沁み入るような主題曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」は、映画全体の感情を掬い取り、映像と調和することで唯一無二の世界を創出している。

 第36回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門に正式出品され、英国アカデミー賞では作曲賞を受賞。映像、音楽、テーマ、そのすべてが高度に融合した本作は、日本映画が世界で本格的に評価される礎のひとつとなった。

 今なお色褪せることなく、時代や国境を超えて、観る者の心に深い余韻と問いを残し続けている。

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