途絶えることのなかった主演への賛否両論
『白雪姫』(2025)
監督:マーク・ウェブ
脚本:エリン・クレシダ・ウィルソン
出演者:レイチェル・ゼグラー、アンドリュー・バーナップ、ガル・ガドット
【作品内容】
白雪姫は心優しく、国で過ごす人々が幸せに満ちていてほしいと願っていた。しかし、王国は邪悪な女王により支配されてしまっている。女王は、見た目の美しさと権力に固執していたが、白雪姫の持つ「美しさ」を妬んでいた。白雪姫は女王から命を狙われ、不思議な森に逃げ込む。そこで、7人の小人たちやジョナサンに出会い、彼女は心が救われるのであった。
女王の支配によって希望が見えない王国に、白雪姫の美しさが奇跡を起こす。
【注目ポイント】
ディズニー初の長編アニメーション映画『白雪姫』を実写化した本作の監督を務めるのは、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズや『(500)日のサマー』(2009)で知られるマーク・ウェブ。
さすがはディズニーと言うべきか、テーマパークのアトラクションのような華やかで没入感のある映像体験は本作でも健在だ。物語は現代的な視点で再構築されており、今この時代に実写化する意義をしっかりと感じ取ることができる。王道のファンタジーに忠実でありながらも、映画館で観るにふさわしいスケールとクオリティを備えている。
しかし、本作は公開前から多くの議論を巻き起こしていた。カラーブラインド・キャスティングや、”小人”という表現・描写への批判がSNS上で大きな波紋を呼び、特に主演を務めたレイチェル・ゼグラーの起用とその発言を巡っては、終始賛否が渦巻いた。こうした周辺の騒動は、作品自体への評価にも影を落とす結果となった。
また、物語から「王子」の存在を排除した構成も賛否両論を招いている。代わりにアンドリュー・バーナップ演じるオリジナルキャラクター・ジョナサンが登場するが、これは女王との対立構図を明確にする意図と同時に、従来の“プリンセスと王子”というディズニーの象徴的な構造からの脱却を意味している。しかしその試みが、結果的に“ディズニーらしさ”を損なってしまったと感じる観客も少なくなかった。
前情報やSNSでの論争によって先入観を抱く人も多いが、オリジナルのアニメーションと比較せず、ひとつの新しい実写映画として本作を受け止めてみれば、異なる視点や評価が生まれる余地もあるだろう。時代とともに変わる価値観に向き合おうとしたディズニーの挑戦作として、注目に値する一作である。
【著者プロフィール:小室新一】
埼玉県出身。映画や旅行、建築などのジャンルで主に執筆活動をしているライター。学生時代から演劇の道へ進み、映画や舞台などに出演。現在は、映画の魅力を多くの人に届ける活動をしている。特に好きなジャンルは、SFアクションやミステリー作品。“今日は残りの人生、最初の日”をモットーに、素直な感情を執筆。
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