高視聴率も…観ていて辛かった「鬱ドラマ」の名作は? 人間の闇を描いた作品5選。絶望感が半端ない…異色作をセレクト

不幸のどん底に叩き落とす展開、後味の悪さ、絶望感の三拍子が揃う“鬱ドラマ”。この世の不幸を詰め込んだような救いのない物語は視聴者を辟易させるが、同時に名作としての側面を併せ持つ作品も多い。そこで本稿では、民放ドラマ史上に残る鬱ドラマを5本セレクトしてご紹介。各作品の魅力を解説していく。(文・編集部)

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90年代ドラマの中でも異彩を放つ鬱ドラマの代名詞

『人間・失格−たとえばぼくが死んだら−』(1994)

女優の桜井幸子
桜井幸子【Getty Images】

脚本:野島伸司
キャスト:赤井英和、桜井幸子、横山めぐみ、堂本剛、堂本光一

【作品内容】

 中学3年生の大場誠(堂本剛)は東京の名門校に転校し、優秀な留加(堂本光一)と親しくなるが、イジメ問題に異を唱えたことで標的になってしまう。

 嫉妬や誤解、新見(加勢大周)の策略により教師や友人までも敵に回り孤立。次第に誠の心は追い詰められていく。

【注目ポイント】

 1994年にTBS系で放送されたドラマ『人間・失格−たとえばぼくが死んだら−』は、今なお「鬱ドラマ」の代名詞として語られる、衝撃的な作品である。主演は赤井英和。そしてKinKi Kidsの堂本剛と堂本光一が共演したことでも大きな話題を呼んだ。

 中でも、堂本剛が演じた中学生・大場誠の転落劇は、多くの視聴者の胸に深い爪痕を残した。素直で人懐っこい少年だった誠が、転校先の名門校・修和学園でいじめの渦中に巻き込まれ、徐々に心を蝕まれていくさまは、あまりに痛々しく、見る者に重い現実を突きつける。

 誠は、正義感からいじめに抗議するが、それが逆に孤立を招く。教師たちは表面上の平和を保つために目を背け、同級生たちは嫉妬と悪意を剥き出しにする。味方はどこにもいない。かつては信頼していた親友・影山留加(堂本光一)との関係も崩壊し、誠の世界は静かに、しかし確実に崩れていく。

 本作が“鬱ドラマ”と称されるゆえんは、その徹底して救いのない展開にある。学校という閉鎖的で残酷な社会、そして頼るべき家庭ですら誠を支えきれず、父親との関係にもひびが入っていく。どこにも逃げ場のない閉塞感と孤独は、観る者の胸を締め付ける。

 映像や音楽の演出も、終始不穏で冷ややかな空気をまとい、青春ドラマの対極に位置する世界観を徹底して貫いた。明るく華やかな学園ものが主流だった時代において、本作は明らかに異質な存在だった。

 30年が経った今もなお、『人間・失格』は多くの視聴者に深い印象を残し続けている。その重苦しくもリアルな描写は、教育や社会に潜む闇を静かに、しかし強烈に照らし出している。

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