第95回アカデミー賞授賞式が遂に3月13日(※日本時間)に行われる。誰もがその結果を心待ちにし、興行収入にも大きく関わってくるアカデミー賞。今回はそんなアカデミー賞がどのようにして始まったのか、その成り立ちを米colliderの記事を参考に解説していく。

始まりは至って単純？
1929年に開始されたアカデミー賞の創設秘話

アカデミー賞は1929年5月16日にアメリカのロサンゼルスにある「ザ・ハリウッド・ルーズヴェルト・ホテル」で、1927年7月から1928年8月までの映画を対象とし、最初の授賞式が開催された。12部門に分けられたこの授賞式は、今日慣れ親しんでいる長時間の盛大なセレモニーに比べると短いものであった。

最初のアカデミー賞作品賞は戦争・ロマンス映画の『つばさ』(1927年)に贈られた。監督賞は、ルイス・マイルストン監督の映画『美人国二人行脚』(1927年)が受賞。また俳優エミール・ヤニングス、ジャネット・ゲイナーがそれぞれ主演男優賞と主演女優賞を受賞した。以来エンターテインメント業界では、華やかな授賞式を開催し、その年、最も優れた仕事をした業界人を表彰するのが慣習となっている。

アカデミー賞の始まりは至って単純であり、背景には実用的でビジネス的な理由がある。1927年にアメリカの大手映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤーの共同創始者の1人・ルイス・B・メイヤーは、映画業界とのコネクションを広げるために、カリフォルニア州サンタモニカに私邸を建てた。その際に映画業界で働く俳優陣が組合を組織しようとしていることに気づき、それが出来上がれば他の業界人もこの組合に加入し、俳優陣が映画やスタジオから直接収入を得る結果になると考えた。

利益を失うことを恐れたメイヤーは、映画芸術科学アカデミーを設立。従業員に健康保険などの福利厚生を与える代わりに、毎年3月に私たちが知っている「アカデミー賞」を創設した。

つまり、アカデミー賞は当初、俳優陣や監督達の優れた仕事を賞賛するためではなく、業界関係者や一部のエリート陣がお酒を飲み交わし、互いの背中を叩き合う場所に過ぎなかったわけだ。しかし、メイヤーは外からの目を気にして、ハリウッドスターや監督たちがドレスアップして素敵なディナーを楽しみ、場合によってはスピーチを行い、全米の同業者や、ファンから賞賛されるような、手の込んだセレモニーが行われることになった。

また、最初の2回はオスカー像など存在しておらず、オスカー像の名前の由来は、当時アカデミーの司書をしていたマーガレット・ヘリックが「私のオスカーおじさんに似ている」と言ったところから始まったという説がある。またこの像は当時の著名な俳優、女優、その他の著名人の似顔絵であるという説もある。

設立当初は、形だけの催しであったアカデミー賞だが、歴史を重ね、現在では名実ともに世界最高峰の映画の祭典となった。毎年3月が近づくたびに胸を高鳴らせる映画ファンは、ルイス・B・メイヤーに感謝すべきなのかもしれない。

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