中島みゆきの不朽の名曲を映画化

『糸』(2020)

菅田将暉
菅田将暉【Getty Images】

監督:瀬々敬久
キャスト:菅田将暉、小松菜奈、榮倉奈々、成田凌、山本美月

【作品内容】

平成元年生まれの漣(菅田将暉)と葵(小松菜奈)は13歳で出会い恋に落ちるが、葵は北海道を去ってしまう。それから8年後、東京で再会するもそれぞれの人生を歩んでいた2人は平成最後の年、運命の糸に導かれ再び出会う。

【注目ポイント】

 中島みゆきの名曲「糸」は、1992年の発表以来、世代を超えて愛され続けている。そんな不朽の歌をモチーフに描かれたのが映画『糸』(2020)である。

 主演は菅田将暉と小松菜奈。北海道で出会った幼なじみの漣と葵は、淡い恋心を抱きながらも若さゆえの別れを経験する。以降、18年もの歳月を経て二人の人生は何度も交差していく。

 映画は、出会いと別れ、再会という人生の節目を描きながら、運命の糸がどのように人を導いていくのかを丁寧に映し出す。現実の厳しさや人生の選択の重みを描いたことで、甘すぎないリアルな人間ドラマとなっている。

 菅田将暉は、誠実で不器用な漣を自然体で演じ、人生の波にもまれ成長する姿を説得力ある演技で見せた。一方、小松菜奈は逆境にも負けず懸命に生き抜こうとする葵を繊細な感情表現で演じている。

 そして劇中で「糸」の旋律は控えめに扱われているが、その精神は物語全体に息づいている。偶然に見える出会いが、実は人生の必然だったと気づかされる瞬間の積み重ねが心にじんわりと響く。

 名曲から新たな物語が生まれた『糸』は、自身の人生にもまだ見えない“糸”があることを静かに思い出させてくれる。観終えた後、大切な誰かとの出会いに改めて感謝したくなる、そんな作品だ。

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