兄弟の絆が生んだ“顔出しなし”の奇跡

『キセキ ―あの日のソビト―』(2017)

松坂桃李
松坂桃李【Getty Images】

監督:兼重淳
キャスト:松坂桃李、菅田将暉、忽那汐里、平祐奈、野間口徹

【作品内容】

 厳格な医師の父のもとを飛び出したミュージシャンのジン(松坂桃李)は、歯科医師を目指す弟ヒデ(菅田将暉)の音楽の才能に気づく。夢を託そうとするが、父に音楽活動を打ち明けられない兄弟は、顔出しなしのCDデビューを画策する。

【注目ポイント】

 GReeeeNの「キセキ」は、誰もが一度は耳にしたことがある名曲といえるだろう。2008年のリリース以来、結婚式や卒業式など人生の節目を彩ってきた。その誕生の舞台裏を描いたのが、2017年公開の映画『キセキ ―あの日のソビト―』だ。

 メンバー全員が現役の歯科医師という異色の音楽グループの実話をもとに、本作は音楽と学業のはざまで葛藤しながら夢を追った若者たちの物語を紡いでいる。

 楽曲プロデューサーであり兄のJIN(ジン)を演じるのは松坂桃李。医師である父との衝突を経て音楽の道を選んだ青年の情熱と葛藤を丁寧な演技で魅せている。そして弟でグループのリーダーを務めるHIDE(ヒデ)を菅田将暉が演じ、歯科医師の夢と音楽への思いの狭間で揺れる心情を繊細に表現した。

「顔出しなし」という異例のスタイルでデビューを果たすまでの道のりには、家族との衝突や仲間との友情、未来への希望にあふれており夢を諦めずに進むことの尊さを教えてくれる。音楽が持つ力と、それを支える人々の思いに改めて気づかされる、まさに“キセキ”のような作品である。

 なお、本作に続く楽曲映画化プロジェクト第2弾として制作されたのが、映画『愛唄 約束のナクヒト』である。こちらは同じく名曲「愛唄」をモチーフに送る青春ラブストーリーで、若者たちの切なくも温かな想いが描かれている作品だ。

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