“あんぱん”史上、最も胸をえぐられた別れ
細田佳央太(原豪)
細田佳央太が演じた無口な青年・原豪。多くを語らずとも、その眼差しの温かさと佇まいが、何より雄弁に彼の内面を物語っていた。台詞の少なさすら魅力に昇華させた演技は、石職人として釜次(吉田鋼太郎)の弟子であり、朝田家の大切な一員として、物語に深い陰影を与えていた。
とりわけ印象的だったのが、河合優実演じる蘭子とのやりとり。言葉少なながらも確かに交差する想い、すれ違いながらも惹かれ合う2人の関係性に、視聴者はヤキモキし、やがてその想いが実ったときには大きな祝福が寄せられた。蘭子の投げかけに、豪がぽつりと返す。その静かなやりとりが、信頼と愛情の深さを表現していた。
しかし、そんな豪に訪れたのはあまりにも早すぎる死だった。第8週・第37話、戦地に送られた豪は、蘭子のもとへ帰ることなく命を落とす。彼の帰還を心待ちにしていた蘭子が、「あと279日」と日数を数えていた矢先に届いた、あまりにも無情な訃報。釜次が地面に額を押し付けて号泣し、蘭子が声も出せずに立ち尽くす姿は、言葉を失うほどの衝撃と喪失感を残した。
「豪ちゃんに帰ってきて欲しい私の願望」「私は豪ちゃんが好きでした…ッッ」「豪ちゃん亡くなるとこきついよなあ」SNSには、蘭子と同じ思いを抱いた視聴者たちの慟哭が溢れた。
原豪という存在がどれほど多くの人の心を掴んでいたか――その早すぎる退場に対するSNSの反響が、それを何よりも雄弁に物語っていた。