史上もっとも過激な民放ドラマは? 物議を醸した不倫モノ5選。心がざわつく…視聴者に衝撃を与えた作品をセレクト

text by 阿部早苗

かつてはタブーとされながらも、今やドラマの一大ジャンルとなった“不倫劇”。今回は、中でも過激な描写が視聴者の心を揺さぶり、物議を醸した作品を5本セレクト。その奥深き魅力を紐解く。(文・阿部早苗)

——————————

裏切りの濡れ場が刺さる、夫婦崩壊と復讐の物語

『離婚しない男-サレ夫と悪嫁の騙し愛-』(テレビ朝日系、2024)

篠田麻里子
篠田麻里子【Getty Images】

脚本:鈴木おさむ
キャスト:伊藤淳史、篠田麻里子、小池徹平、玉田志織、高橋克典

【作品内容】

 新聞記者の岡谷渉(伊藤淳史)は、妻・綾香(篠田麻里子)の浮気を目撃し離婚を決意する。娘の親権を得るべく出世を捨てて在宅勤務に異動し、家事育児に専念するが…。

【注目ポイント】

 ドラマ『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)が放送時に話題を呼んだ最大の要因のひとつは、篠田麻里子演じる不倫妻・綾香による衝撃的な濡れ場の数々だろう。

 物語の序盤から描かれるのは、綾香とその不倫相手・司馬マサト(小池徹平)との背徳的な逢瀬。軽いキスから始まるかと思いきや、視聴者の予想を大きく裏切る濃密な絡みへと展開する。鈴の首輪がネックレスのように装着され、抑えきれない吐息と、言葉よりも雄弁な視線と仕草が交錯する。深夜枠にしても異例の踏み込みで、その描写はもはやR指定映画の域に達していた。

 かつて清純派のイメージで知られた篠田麻里子は、この作品でその殻を完全に打ち破った。欲望に身を任せる綾香というキャラクターを、体当たりで演じきっている。そして何より印象的なのは、濡れ場の一瞬一瞬に滲む綾香の複雑な心情だ。彼女は単なる悪女ではなく、葛藤と孤独を内に抱えた人間として描かれている。

 一方で、夫・渉(伊藤淳史)の視点に立てば、これらの濡れ場はまさに“地獄絵図”である。娘の親権を守るため、離婚を踏みとどまる渉。その決意をあざ笑うかのような綾香の裏切りは、静かに、しかし確実に彼の精神を蝕んでいく。

 だが本作は、単なる不倫劇では終わらない。物語の奥には、実は渉に対する司馬マサトの復讐劇というもうひとつの構図が隠されている。この複雑な人間模様が、ドラマ全体にサスペンスの陰影を与えている。

 過激な濡れ場という強烈なビジュアルの衝撃を入り口にしつつ、本作が描いているのは、夫婦のすれ違い、育児の孤独、家族の崩壊と再生といった普遍的なテーマだ。破綻寸前の家庭の内側に潜む感情の機微を丁寧に描き出しながら、「家族とは何か」という問いを静かに投げかけてくる、実に重厚な人間ドラマである。

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!