視聴者の度肝を抜いた狂気の三角関係
『奪い愛、冬』(テレビ朝日系、2017)
脚本:鈴木おさむ
キャスト:倉科カナ、三浦翔平、大谷亮平、水野美紀
【作品内容】
デザイン会社で働く池内光(倉科カナ)は、恋人・康太(三浦翔平)からプロポーズされ幸せを感じていた。そんな中、参加したデザインコンペで、かつて深く愛し、突然姿を消した男性と再会する。
【注目ポイント】
2017年に放送されたドラマ『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)は、地上波ドラマの常識を打ち破るような過激な展開で視聴者の度肝を抜いた。不倫、裏切り、嫉妬――人間の奥底に潜む欲望や執着をあらわにし、観る者の情動を激しく揺さぶるラブシーンの数々が大きな話題を呼んだ。
主人公・池内光(倉科カナ)は、婚約者である康太(三浦翔平)との平穏な日々を送りながらも、かつての恋人・森山信(大谷亮平)との再会によって心が激しく揺れ動く。そんな光に対して、信の妻・蘭(水野美紀)は、愛する者を奪われることへの恐怖と嫉妬に飲み込まれ、次第に狂気を深めていく。
第1話では、光と康太の濃密なベッドシーンが早々に描かれる。「好きすぎて今日は激しくなっちゃうかも」という康太の一言で始まるその場面は、彼の優しさと支配欲が同時に噴き出すような演出で、単なる性愛ではない、心の奥底から湧き上がる情熱の発露として観る者に強烈な印象を残す。
本作におけるラブシーンは、欲望の単なる発露ではなく、愛情、執着、孤独といった複雑な感情が行き着く先として描かれている。触れ合いのなかにこそ宿る切実な想い、言葉では伝えきれない衝動が画面を支配し、その濃密さはSNSを中心に大きな反響を呼んだ。そこには、誰かを愛する苦しみと、愛を奪われる恐怖が確かに滲んでいた。
さらに、このドラマのラブシーンには常に「誰かに見られているかもしれない」という緊張感と背徳の気配がまとわりついていた。中でも水野美紀が演じる蘭の存在感は圧倒的だった。視線ひとつ、佇まいひとつで場の空気を一変させ、物語全体に不穏な影を落とす。彼女の狂気と愛が絡み合う演技は、本作のドラマ性と緊張感を底から支えていたと言えるだろう。