詐欺師を喰う詐欺師、黒崎の緻密で切ない復讐譚

『クロサギ』(TBS系、2006)

山下智久
山下智久【Getty Images】

脚本:篠﨑絵里子
キャスト:山下智久、堀北真希、加藤浩次、市川由衣、麗菜

【作品内容】

 家族を詐欺で失った青年・黒崎(山下智久)は天才詐欺師クロサギとなり、悪徳詐欺師・新川(杉田かおる)を狙う。新川に騙された松村(尾美としのり)を救い、共に金を取り戻そうとする。

【注目ポイント】

 2006年、TBS系で放送されたドラマ『クロサギ』は、従来の復讐劇とは一線を画す「詐欺師を騙す詐欺師」という斬新な構図で、多くの視聴者を魅了した。主演は山下智久。初の連ドラ単独主演作でありながら、そのダークヒーロー像は鮮烈極まりなく、山下の代表作の1本となった。

 主人公・黒崎(山下智久)は、高校生のときに父親が詐欺被害に遭い、一家心中を図るという悲劇に見舞われる。家族を失った黒崎は、復讐を誓い、詐欺師を騙す「クロサギ」として裏社会に身を投じる。ターゲットは“シロサギ”と呼ばれる詐欺師たち。財団詐欺、結婚詐欺、投資詐欺と、手口の異なる詐欺師たちを次々と罠にかけ、法や倫理では裁ききれない悪に鉄槌を下していく。

 復讐劇としての本作の魅力は、「やられたらやり返す」では終わらない点だ。黒崎は詐欺師の心理を読み、法律の盲点を突き、巧みな演技力で罠を仕掛けていく。そこにあるのは冷徹な復讐心ではなく、被害者の涙と怒りを代弁する熱い正義心だ。1話完結の構成でありながら、黒崎の過去や葛藤が徐々に明かされていくストーリー設計も秀逸だった。

『クロサギ』はその後、2008年に映画化され、2022年には平野紫耀主演で再びドラマ化がされるなど、今なお根強い人気を誇る。その理由は、復讐という普遍的テーマに救いや希望を込めた、スケールの大きい物語構成に依るところが大きいだろう。

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