暴力も殺意もいらない 現代の“社会的”復讐

『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(テレビ東京系、2023)

馬場ふみか、佐藤瑠雅 写真:Wakaco
馬場ふみか、佐藤瑠雅 写真:Wakaco

脚本:上村奈帆、小坂志宝、服部紘二、倉地雄大
キャスト:馬場ふみか、野村周平、佐藤玲、岡本夏美、永瀬莉子

【作品内容】

 結婚1年目の専業主婦・茜(馬場ふみか)は、夫・大輔(野村周平)の暴力に苦しむ日々。妊娠が発覚し喜ぶも、大輔の浮気を疑う香水の匂いに気づき、茜はついに復讐を決意する。

【注目ポイント】

 近年、復讐をテーマにしたドラマが注目を集める中、異彩を放ったのが深夜枠で放送されたドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(テレビ東京、2023年1月放送)だ。本作は、モラハラ・DV・浮気など、家庭の裏で蔓延する見えにくい暴力に晒された妻たちが、加害者である夫に社会的制裁を与えていく新感覚の復讐ドラマである。

 原作は、三田たたみとアップクロス(作画)によるWebコミック。縦読み×フルカラーというスタイルで人気を博し、ドラマ化された。

 ドラマSeason1では、馬場ふみか演じる専業主婦・茜が、DVと浮気を繰り返す夫(野村周平)に苦しめられた末、謎の手紙に従って社会的制裁を開始。肉体的な報復ではなく、名誉や仕事、信用を徐々に奪っていくという方法で、じわじわと追い詰めていく。

 続くSeason2(2024年1月~3月放送)ではキャストを一新し、高梨臨演じる美咲が、息子を亡くしたことをきっかけに夫の秘密を知り、抹殺計画を進めるという物語が綴られた。

 本作の革新性は、殺人や暴力に訴えず、社会的に消すという現代的かつ現実的なアプローチにある。情報社会の特性を活かし、加害者を孤立させ、信用を剥奪することでダメージを与える構成は、視聴者に静かな恐怖と痛快さを与えた。

 原作は現在Season3に突入し、すでに最終話を迎えている。次なるドラマ化にも期待したい。

【著者プロフィール:阿部早苗】

仙台在住のライター。2020年にライターデビュー。これまで東日本大震災での企業活動をまとめた冊子「こころノート」第2弾、プレママ向けフリーペーパーを執筆した他、エンタメニュース、福祉関連記事、GYAOトレンドニュース、地元グルメライターなどWEB媒体を中心に執筆。映画なしでは生きられないほど映画をこよなく愛する。

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【了】

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