“変身”を続ける、等身大ヒーロー
赤楚衛二『仮面ライダービルド』(2017)
脚本:武藤将吾
キャスト:犬飼貴丈、赤楚衛二、高田真帆 ほか
かつて「仮面ライダー出身」という肩書きは俳優にとって呪いにもなりえた。ヒーローのレッテルに縛られ、その後の演技に幅が出せないという偏見。しかし、近年はそのイメージが変わりつつある。特に、ヒーローを演じた後、役者として目覚ましい成長を遂げた存在として語られることが増えたのが赤楚衛二である。
赤楚が演じたのは、2017年放送の『仮面ライダービルド』に登場する万丈龍我(仮面ライダークローズ)だ。熱血漢で少々不器用ながらも、芯は真っすぐな王道のライダーパートナーとして、仲間思いで情熱的なキャラクターを強く印象づけた。ヒーローとしての変身シーンだけでなく、その人間味あふれる姿が多くのファンの心をつかんだ。
だが、赤楚の真の魅力が発揮されたのは、ライダースーツを脱いだそのあとだった。ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称:チェリまほ)(2020年)では、気弱で心優しく、地味で冴えない男・安達役を演じ、一躍話題となった。決して男らしさを欠いているわけではないが、周囲を包み込むような柔和な雰囲気が、時代が求めるスター像にフィットしていることは間違いない。
変身ヒーローという経験を経て、役者としての幅を着実に広げながら、自身のスタイルを丁寧に築いてきた赤楚。今や主演作や映画、舞台と多方面で活躍する彼は、作品ごとに異なる表情を見せながらも、常に自然体で人の心に寄り添う温かさをまとっている。