七変化の原点。変幻自在のスター俳優
佐藤健『仮面ライダー電王』(2007)
脚本:小林靖子 ほか
キャスト:佐藤健、白鳥百合子、中村優一 ほか
「平成仮面ライダーシリーズ」の中でも、ひときわ異彩を放った『仮面ライダー電王』(2007年)。その主役・野上良太郎を演じたのが、当時18歳の佐藤健だ。物語の中で良太郎はなんと、7体ものイマジン(未来人のエネルギー体)に憑依されるというトンデモ設定だった。
モモタロスに始まり、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、ジーク、デネブ、ゴーストイマジンまで、憑依されるたびにキャラが七変化する。バトルもギャグも涙もこなす、若手にはあまりにも過酷な役を佐藤は軽やかに演じ切った。
この七変化経験が、のちの佐藤健の俳優人生に大きく影響を与えているのは間違いない。映画『るろうに剣心』シリーズで見せたシリアスな殺陣、ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系、2020)でのツンデレ医師。まったく違うキャラを自在に操るその演技力は、イマジン7体分の経験値が活きているといっても過言じゃない。
多くのライダー俳優がシリーズ終了とともにその経験を過去として切り離していく中で、佐藤は通過点として仮面ライダーを扱うことなく、むしろ自然に背負い続けている。イベントやインタビューで『電王』に言及する姿勢からも、それが彼にとって単なる出発点ではなく、原点であり誇りであることが伝わってくる。過去を否定せず、演技の糧として生かし続けるその姿勢が、佐藤健という俳優の幅の広さを形作っていると言っても過言ではないだろう。