企業買収の陰でうごめく、欲望と正義の狭間
『ハゲタカ』(2009)
脚本:林宏司
監督:大友啓史
キャスト:大森南朋、柴田恭兵、栗山千明、玉山鉄二、松田龍平
【作品内容】
バブル崩壊後の日本経済を舞台に、企業買収を繰り返す外資系ファンドマネージャー・鷲津(大森南朋)と、彼に立ち向かう銀行マン・芝野(柴田恭兵)たちの攻防を描く。
【注目ポイント】
2007年、NHKで放送された『ハゲタカ』は、日本経済の裏側と人間の欲望を描いた社会派ドラマの傑作である。原作は真山仁の小説。“ハゲタカ”の異名を持つ外資系ファンドマネージャー・鷲津政彦(大森南朋)が、日本企業を次々と買収していく姿を描く。
「ハゲタカ」と揶揄されながらも、腐敗した金融業界と向き合う鷲津の姿は冷徹ながらも芯のある人物像として描かれた。元上司の銀行員・芝野健夫(柴田恭兵)や、対立する経営者・西野(松田龍平)らとの攻防は、単なる経済劇にとどまらず、人間ドラマとしても高い評価を受けた。
2009年には続編として映画版『ハゲタカ』が公開され、中国系ファンドによる日本企業買収に立ち向かう鷲津の姿が描かれた。新たなライバル・劉一華(玉山鉄二)との対決は、グローバル資本主義の中で揺れる日本の姿を象徴していた。TOB(敵対的買収)や株式買収といった専門的な題材を扱いながらも、誰にでも理解できる緊迫感のあるストーリー展開が支持された。さらに2018年には、綾野剛主演でテレビ朝日により再びドラマ化されている。
『ハゲタカ』シリーズは、経済という一見冷徹なテーマの中に、人間の再生や信念といった熱いドラマを描き出した点で、まさに金融ドラマの金字塔といえる。経済に興味がある人も、そうでない人も、心を揺さぶられる作品であった。