ドラマファンから賞賛された繊細な演技

坂東龍汰『ライオンの隠れ家』(TBS系、2024)

坂東龍汰 写真:武馬怜子
坂東龍汰 写真:武馬怜子

脚本:徳尾浩司、一戸慶乃
出演:柳楽優弥、坂東龍汰、佐藤大空、齋藤飛鳥、岡崎体育

【注目ポイント】

 坂東龍汰は、これまでも映画やドラマで着実にキャリアを築いてきた注目株だ。奇をてらわず、役にまっすぐ向き合う姿勢は業界内で高く評価されていたが、2024年秋のTBS系ドラマ『ライオンの隠れ家』で演じた弟役をきっかけに、より広く名前が知られるようになった。

 坂東が演じたのは、柳楽優弥演じる主人公・洸人の弟、小森美路人(みっくん)。自閉スペクトラム症のある青年で、日々のルーティンを崩さず物事に対して非常に正確で慎重な人物だ。たとえば、兄を迎える際に「今日は1分42秒の遅刻です」と告げる場面は、みっくんの繊細な感性と日常を安定させようとする意志がにじむ。坂東はこの役を、過剰な演技に頼ることなく、細部に心を配りながら丁寧に演じきった。

 作品は、両親を亡くした兄弟が“ライオン”と名乗る謎の少年と出会い、次第にある事件に巻き込まれていくヒューマンサスペンス。そんな中で、坂東演じるみっくんというキャラクターが見せる変化のプロセスは、物語の軸となっていた。

 この役柄に対する評価は非常に高く、放送後には第122回「ザテレビジョン ドラマアカデミー賞」で助演男優賞を受賞。コアな邦画ファンだけでなく、幅広い層に演技の巧みさが認知され、坂東龍汰の名前は一気に広まった。

 阪本順治監督『冬薔薇』(2022)、瀬々敬久監督『春に散る』(2023)、二ノ宮隆太郎監督『若武者』(2024)など、日本映画を代表する名匠から期待の新鋭の作品に出演し、目を引く演技をみせてきた坂東。『ライオンの隠れ家』で本格ブレイクを果たした今後、どんな作品でどんな表情を見せてくれるのか。期待が高まる。

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