静かな語り口が胸を打つロードムービーの傑作
『パリ、テキサス』(1984)
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:L・M・キット・カーソン、サム・シェパード
出演:ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー
【注目ポイント】
ドイツを代表する映画監督ヴィム・ヴェンダースの代表作のひとつが、本作『パリ、テキサス』(1984)である。カンヌ、ヴェネチア、ベルリンといった国際映画祭の常連であり、複数の受賞歴を持つヴェンダースは、1970年の長編デビュー以降、『緋文字』(1973)、『都会のアリス』(1974)、『アメリカの友人』(1977)、『ベルリン・天使の詩』(1988)、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)、『ミリオンダラー・ホテル』(2001)など、各年代で印象的な作品を世に送り出してきた。近年では役所広司主演の『PERFECT DAYS』(2024)がアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされ、話題を呼んだ。
本作『パリ、テキサス』は、第37回カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを受賞。英題「Paris, Texas」は、物語の舞台となるアメリカ・テキサス州北東部の都市パリスを指す。
物語は、かつて妻子を捨てて失踪していた男・トラヴィスが、行き倒れの姿で発見されたことから始まる。弟のウォルトが彼を迎えに行き、無言だったトラヴィスが次第に心を開き始める。ロードムービーの形式をとりながら、家族との別れと再会、そして再びの別れを繊細に描く。
主人公トラヴィスを演じたのは、名バイプレイヤーとして知られるハリー・ディーン・スタントン。1957年のデビュー以来、2017年に亡くなるまでに100本以上の映画に出演し、映画史に残る存在感を放ち続けた。